この条約は、情報関連技術の発達等に対応して、著作権を一層効果的に保護することを目的とするものである。この条約は、前文及び本文25箇条から成り、その概要は、次のとおりである。
1 ベルヌ条約との関係(第一条関係)
一 この条約は、ベルヌ同盟の構成国である締約国については、ベルヌ条約第二○条に規定する特別の取極を構成する。
二 締約国は、ベルヌ条約(パリ改正)の著作権に関する規定(同条約第一条から第二一条まで)及び同条約の附属書の規定を遵守する。
2 ベルヌ条約第二条から第六条までの適用(第三条関係)
締約国は、この条約に定める保護について、ベルヌ条約(パリ改正)の著作権の保護に関する基本的な規定(同条約第二条から第六条まで)を準用する。
3 コンピュータ・プログラム(第四条関係) コンピュ一夕・プログラムは、文学的著作物として保護される。
4 データの編集物(データベース)(第五条関係)データその他の素材の選択又は配列によって知的創作物を形成する編集物は、著作物として保護される,その保護は、素材自体に及ぶものではなく、素材について存在する著作権を害するものでもない。
5 譲渡権(第六条関係) 著作者は、販売その他の譲渡によりその著作物の原作品及び複製物を公衆に供与することを許諾する排他的権利を有する。もっとも、締約国は、この権利の消尽(著作物が譲受人に適法に譲渡された時点で譲渡権が消滅すること。)の条件を自由に定めることができる。
6 貸与権(第七条関係) コンピュータ・プログラム、映画の著作物及びレコードに収録された著作物の著作者は、その著作物の原作品又は複製物の公衆への商業的貸与を許諾する排他的権利を有する。
7 公衆への伝達権(第八条関係) 著作者は、有線又は無線の方法によるその著作物の公衆への伝達を許諾する排他的権利を有する。
8 写真の著作物の保護期間(第九条関係) 締約国は、写真の著作物については、他の種類の著作物の保護期間(著作者の生存の間及びその死後五〇年)よりも短期間の保護(ただし、製作の時から二五年以上)とすることを認めるベルヌ条約(パリ改正)第七条(4)の規定を適用しない。
9 制限及び例外(第一〇条関係) 締約国は、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合には、この条約に基づいて著作者に与えられる権利の制限又は例外を国内法令に定めることができる。
10 技術的手段に関する義務(第一一条関係) 締約国は、この条約又はベルヌ条約(パリ改正)に基づく著作者の許諾権の侵害を抑制するために著作者が用いる技術的手段が回避されることを防止するため、適当な法的保護及び効果的な法的救済について定める。
11 権利管理情報に関する義務(第一二条関係) 締約国は、この条約又はベルヌ条約(パリ改正)が対象とする権利の侵害につながることを知りながら、権限なく、故意に電磁的な権利管理情報(著作物、著作者及び著作物の利用条件等を特定する情報であって、著作物の複製物に付されるもの等)を除去し又は改変する行為に対し、適当かつ効果的な法的救済について定める。12 適用期間(第二二条関係)締約国は、この条約に定める保護を、この条約の効力発生の時に保護期間が満了していないすべての著作物について適用する。
13 権利行使の確保に関する規定(第一四条関係) 締約国は、この条約が対象とする権利の侵害行為に対し効果的な措置がとられるよう、権利行使を確保するための手続を国内法において確保する。
14 管理規定(第一五条及び第一六条関係)
一 締約国は、その総会を設置する。総会は、この条約の適用及び運用等に関する問題を取り扱い、二年に一回、通常会期として会合する。
二 この条約の管理業務は、世界知的所有権機関国際事務局が行う。
15 最終規定(第一七条〜第二五条関係) この条約の締約国となる資格、効力発生、廃棄等について規定している。