特許協力条約規則(PCT規則)46.5(b)、66.8(a)、70.2(cの2)の
改正に係る日本国特許庁における運用について

平成22年6月
特許審査第一部調整課審査基準室


1.PCT規則46.5(b)、66.8(a)、70.2(cの2)の改正の概要
平成21年の第40回PCT同盟総会においてPCT規則46.5(b)、66.8(a)、70.2(cの2)の改正提案が採択されました。この改正は、平成22年7月1日から発効します。
改正後においては、PCT第19条又は第34条の規定に基づき明細書、請求の範囲又は図面の補正を行う場合、補正のための差替え用紙に添付する書簡に、出願時の国際出願中の補正の根拠を表示しなければなりません(規則46.5(b)、66.8(a))。また、補正の根拠を表示しなかった場合、国際予備審査機関は、当該補正が行われなかったものとして国際予備審査報告を作成することができます(規則70.2(cの2))。
この規定は、平成22年7月1日以降に提出される、PCT第19条又は第34条の規定に基づく補正に適用されます。

2.国際予備審査機関としての日本国特許庁に対する補正の根拠の表示方法
「補正の根拠」とは、国際出願時の明細書、請求の範囲又は図面における補正の基礎となる記載箇所をいいます。
「表示する」とは、国際出願時の明細書、請求の範囲又は図面における補正の基礎となる記載箇所を特定できる程度の説明を記述することをいいます。例えば、「明細書参照」、「実施例参照」等の漠然とした説明は、補正の根拠を表示したとは認められません。
特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(国際出願法)第11条の規定による補正(PCT第34条の規定に基づく国際予備審査請求に伴う補正)を行う際には、差替え用紙に添付する書簡としての手続補正書(様式第15(備考4)又は様式15の2(備考2))の「補正の内容」の欄に、補正の根拠を表示して下さい。
具体的な表示方法は以下のとおりです。

ア.請求の範囲の補正について
(ア)請求の範囲に変更がある場合
補正後の請求の範囲に、出願時の請求の範囲からの変更がある場合には、その変更が、出願時の明細書、請求の範囲又は図面のどの記載に基づいているのかを説明してください。
なお、請求項を削除した場合には、補正によってどの請求項を削除したのかを説明すれば十分です。
(イ)請求項を新たに記載した場合
出願時の明細書又は図面に記載されている発明を、請求項として新たに記載した場合には、出願時の明細書又は図面のどの記載に基づいているのかを説明してください。

(請求の範囲の補正の根拠の表示例)
・ 請求項1:出願時の請求項3を請求項1とし、引用形式を独立形式に変更した。
・ 請求項2:「圧縮率を変えて記録する」の記載は、出願時の明細書の段落[○○○○]に記載された事項に基づくものである。
・ 請求項3:出願時の明細書の段落[□□□□]〜[××××]に記載された事項に基づく発明を新たに記載したものである。
・ 請求項4:「MPEG方式で記録すること」の記載は、出願時の明細書の段落[△△△△]に記載された事項に基づくものである。

イ.明細書、図面の補正について
(ア)明細書、図面に変更がある場合
補正後の明細書、図面に、出願時の明細書、図面からの変更がある場合には、その変更が、出願時の明細書、請求の範囲又は図面のどの記載に基づいているのかを説明してください。
なお、明細書、図面に削除した箇所がある場合には、補正によってどの部分を削除したのかを説明すれば十分です。
(イ)明細書、図面に形式的な変更(段落番号のみの変更等)がある場合
補正後の明細書における出願時の明細書、図面からの変更が、出願時の明細書、図面の形式的な変更(段落番号のみの変更等)である場合には、どのような変更がされたのかを説明してください。

(明細書の補正の根拠の表示例)
・ 段落[0007]の「焼成調理されたポテトチップスの製造法であって、ポテトチップス生地の焼成前又は後に」、「植物性油脂由来」の記載は出願時の明細書の段落[□□□□]に記載された事項に基づくものである。
・ 段落[0007]の「滴下、塗布、噴霧、練り込み等を行う」の記載は、出願時の明細書の段落[××××]に記載された事項に基づくものである。
・ 段落[0007]の「焼成調理後の該油脂組成物の含有量が10〜35重量%である」の記載は、出願時の明細書の段落[○○○○]に記載された事項に基づくものである。

3.補正の根拠が表示されなかった場合の取扱い
国際予備審査機関としての日本国特許庁は、以下のとおり運用します。
ア.差替え用紙に添付される書簡に、補正の根拠が表示されていない場合には、審査官が出願人に対して非公式な連絡を行い、補正の根拠について説明を求めることがあります。
イ.審査官が出願人に対して非公式な連絡を行ったにもかかわらず、補正の根拠を特定できる程度の説明がなされなかった場合には、審査官は、PCT規則70.2(cの2)に基づき、当該補正が行われなかったものとして見解書又は国際予備審査報告を作成します。

<この記事に関する問い合わせ先>
特許庁特許審査第一部調整課審査基準室
電話:03-3581-1101 内線:3112
[更新日 2010.6.24]