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第二 「類似役務審査基準」作成の趣旨
(一)サービスマーク登録制度の導入
 今般、サービスマーク登録制度を導入するための「商標法の一部を改正する法律」が、平成3年法律第65号として公布され、平成4年4月1日から施行されることとなった。
 この「商標法の一部を改正する法律」は、近年におけるサービス取引の著しい発展等に鑑み、サービスの提供者が自己の業務に係るサービスと他人の業務に係るサービスとの識別のために使用をする標章(サービスマーク)を登録制度の下で保護することにより、サービスの提供者の業務上の信用の維持及び需要者の利益の保護を図るものである。
 今回の改正においては、「商標」の定義を現行の「商品について使用をする標章」から「商品又は役務(サービス)について使用をする標章」に改め、標章についての「使用」の定義として、役務に係る標章の「使用」の定義を新たに定め、さらに商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあり、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする等の措置を講じ、その他の関係規定についても所要の整備を行うことによって、従来の商品に使用をする商標と同様に、商標法の枠内でサービスマークも保護することとしたものである。
(二)国際分類の採用
 我が国は商標制度の国際的ハーモナイゼーションの観点から、平成2年2月20日に「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」に加入し、平成4年4月1日のサービスマーク登録制度の導入を機に、国際分類を主たる体系として採用することとした。
 具体的には、「商標法の一部を改正する法律」の施行に伴う「商標法施行令及び商標登録令の一部を改正する政令」(平成3年政令第299号)、「商標法施行規則の一部を改正する省令」(平成3年通商産業省令第70号)において、商標法施行令第1条の別表に「役務の区分」〈第35類〜第42類)を追加し、商標法施行規則第3条の別表に、各区分に属する役務を商品と同様に国際分類に即して定める等の措置が講じられたことによって、役務についても、国際分類に即した分類が誕生することとなった。
 この役務の分類は、次の点が主な特色として挙げられる。
(イ)
 商標法施行規則第3条の別表(以下「省令別表」という。)は国際分類に即して各区分に属する役務又は商品を例示したものであるが、商標登録出願の際の指定役務の表示はこの省令別表に掲載された役務を参考にすることとなるので、出願人又は審査実務上の負担を軽減すべく、国際分類上許容される範囲内で各区分の役務をグループ化(概念括り)し、場合によっては「(・・・を除く。)」「(・・・を含む。)」を付す等の調整を行い、可能な範囲内で概念括りした上で包括表示を付し、概念括りし得ない役務は単独で例示した。
 なお、省令別表の各区分(第35類〜第42類)には、「アルファベット順の一覧表」「各種業法」又は「日本標準産業分類」等を参考にして約400の役務(「アルファベット順の一覧表」に掲載されている約900のサービスのうち、約600のサービスについて対応したものとなっている。)を例示している。

(ロ)
 同一区分内に非類似の役務があるとともに、区分を超えて類似する役務もあることから、商品及び役務の区分は、役務又は商品の類似範囲と同一ではない(改正商標法第6条第2項)。
(三)「類似役務審査基準」作成の意義と方針
 本審査基準は、省令別表に例示されている各区分(第35類〜第42類)に属する役務に基づいて作成したものである。
 「役務の類似」は商標法を理解する上で大事な基礎となるが、この省令別表の役務がサービスマーク登録制度導入に伴って全く新たに追加されたものであるために、改正商標法の施行当初から「役務の類似」を審査基準として公表するのは適当でないとの意見もあった。
 しかし、類似役務に関する適正かつ統一的な審査を行うことが、商標権者のみならず役務の需要者に対しても、役務の出所の混同又は質の誤認を生ぜしめないという重要な役割を果たすことを考慮すれば、役務の類似の範囲を示す本基準を作成し公表する意義は大きいものということができる。さらには、サービスマーク登録制度を通じた不正競争防止あるいは不公正取引排除の観点からみても極めて意義深いものと考えられる。
 したがって、サービスマークに係る関係団体又は各サービス業種ごとの事業者団体等の意見を広く聴取し、それを踏まえた上で各役務ごとに検討を行い、役務の類否を判定する一般的基準である役務の提供の手段、目的又は場所の同一性、需要者の範囲の同一性、業種又は事業者の同一性、規制する法律の関連性、役務の提供の用に供する物品の関連性等を総合的に考慮し、各役務と類似する役務の類似群を作成し、「類似役務審査基準」として公表したものである。
 なお、商標法における役務の類否の判定は、根本的にはサービス取引の実情、経済界の現状に即応すべきものであることから、本基準に、取引の実情より遊離した点が生じた場合は、広く内外の意見を聴取し、これを逐次改定することによって取引の実情を反映したより妥当なものとすべきであると考える。
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