◇標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された議定書(条約第一八号)(外務省)

 この議定書は、外国において標章の保護を受ける手続を簡略化する標章の国際登録制度の確立を目的とするものである。この議定書は、本文二六箇条から成り、その概要は、次のとおりである。
1 マドリッド同盟の構成国(第一条関係)
  この議定書の締約国は、ストックホルムで改正された標章の国際登録に関するマドリッド協定(以下「マドリッド協定(ストックホルム改正協定)」という。)の当事国で構成する同盟(以下「同盟」という。)の構成国となる。
2 国際登録による保護の確保(第二条関係)
 (一) 締約国の官庁に標章登録出願(以下「基礎出願」という。)をした場合又は標章登録(以下「基礎登録」という。)がされた場合には、基礎出願又は基礎登録の名義人は、世界知的所有権機関の国際事務局(以下「国際事務局」という。)の登録簿への標章登録を受けることにより、すべての締約国の領域において当該標章の保護を確保することができる。
 (二) 国際出願は、基礎出願を受理し又は基礎登録をした官庁(以下「本国官庁」という。)を通じ、国際事務局に対して行う。
3 国際出願(第三条関係)
 (一) 本国官庁は、国際出願の願書の記載事項が基礎出願又は基礎登録の記載事項と一致している旨を証明する。
 (二) 出願人は、標章に係る商品及びサービスを指定して国際出願をする。
 (三) 国際事務局は、国際出願がされた標章を国際登録簿に直ちに登録し、関係官庁に遅滞なく通報し、公報に掲載する。
4 領域的効果(第三条の二関係)
 国際登録による標章の保護の効果が及ぶ領域として本国官庁の属する締約国を指定することはできない。
5 領域指定(第三条の三関係)
 国際登録による標章の保護の効果が及ぶ領域としての締約国の指定は、国際出願に際して、更に、国際登録の後にも行うことができる。国際事務局は、領域指定を国際登録簿に直ちに記録し、関係官庁に遅滞なく通報し、公報に掲載する。
6 国際登録の効果(第四条関係)
 標章の国際登録又は領域指定の記録の日から、当該標章は、関係締約国において、標章登録を当該関係締約国の官庁に直接求めていたならば与えられたであろう保護と同一の保護を与えられるものとする。保護の拒絶の通報が行われなかった場合又は保護の拒絶の通報が取り消された場合には、標章の国際登録又は領域指定の記録の日から、当該標章は、関係締約国において、当該関係締約国の官庁による登録を受けていたならば与えられたであろう保護と同一の保護を与えられるものとする。
7 特定の締約国に係る国際登録の効果の拒絶及び無効(第五条関係)
 (一) 標章の保護について領域指定の通報を受けた締約国の官庁は、当該標章に対する保護を与えることができない旨を拒絶の通報において宣言する権利を有する。
 (二) 拒絶の通報については、国際事務局が領域指定の通報を当該官庁に行った日から一年の期間が満了する前に国際事務局に対して行うこととされているが、締約国は、この一年の期間を一八箇月の期間とする旨を宣言することができる。
8 国際登録の存続期間並びに国際登録の従属性及び独立性(第六条関係)
 (一) 国際登録の存続期間は、一〇年とし、また、更新することができる。
 (二) 国際登録の日から五年の期間が満了する前に基礎出願、基礎登録等が保護を受けなくなった場合には、国際登録による保護を主張することはできない。
9 国際出願及び国際登録の手数料(第八条関係)
 (一) 国際登録に当たっては、基本手数料、追加手数料(商品又はサービスの国際分類の数が三を超える場合における一類ごとについての手数料)及び付加手数料(領域指定についての手数料)を前払しなければならない。
 (二) 追加手数料及び付加手数料の収入総額は、関係締約国に配分する。
 (三) 締約国は、追加手数料及び付加手数料による収入の配分を受けることに代えて個別手数料の支払を受けることを希望する旨を宣言することができる。
10 国際登録の国内出願又は広域出願への変更(第九条の五関係)
 国際登録が本国官庁の請求により取り消された場合において、当該国際登録に係る領域指定が行われていた締約国の官庁に対し当該国際登録の名義人であった者が同一の標章に係る標章登録出願をしたときは、当該標章登録出願は、国際登録の日又は領域指定の記録の日に行われたものとみなす。
11 同盟の管理規定(第一〇条から第一二条まで)
 同盟の総会、国際事務局及び財政について規定している。
 同盟の財政については、マドリッド協定(ストックホルム改正協定)の第一二条を準用しているところ、同条は、同盟の予算は国際登録に関する手数料、国際事務局が発行する公報の販売代金等の収入を財源とすること、手数料の額は同盟の収入が少なくとも同盟に関する国際事務局の経費を十分に賄うことができるよう総会が定めること等について規定している。
12 最終条項(第一三条〜第一六条関係)
 この議定書の特定の規定の修正、この議定書の締結、廃棄、寄託者の任務等について規定している。