公文書等の管理に関する法律(平成21年7月1日法律第66号)
 

第一条(目的)
 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。
 

第二条(定義)
 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。
一  法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
二  内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項 及び第二項 に規定する機関(これらの機関のうち第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
三  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
四  内閣府設置法第三十九条 及び第五十五条 並びに宮内庁法 (昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項 の機関並びに内閣府設置法第四十条 及び第五十六条 (宮内庁法第十八条第一項 において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
五  国家行政組織法第八条の二 の施設等機関及び同法第八条の三 の特別の機関で、政令で定めるもの
六  会計検査院
 この法律において「独立行政法人等」とは、独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人及び別表第一に掲げる法人をいう。
 この法律において「国立公文書館等」とは、次に掲げる施設をいう。
一  独立行政法人国立公文書館(以下「国立公文書館」という。)の設置する公文書館
二  行政機関の施設及び独立行政法人等の施設であって、前号に掲げる施設に類する機能を有するものとして政令で定めるもの
 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める研究所その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
 この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二  特定歴史公文書等
三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
四  別表第二の上欄に掲げる独立行政法人等が保有している文書であって、政令で定めるところにより、専ら同表下欄に掲げる業務に係るものとして、同欄に掲げる業務以外の業務に係るものと区分されるもの
 この法律において「歴史公文書等」とは、歴史資料として重要な公文書その他の文書をいう。
 この法律において「特定歴史公文書等」とは、歴史公文書等のうち、次に掲げるものをいう。
一  第八条第一項の規定により国立公文書館等に移管されたもの
二  第十一条第四項の規定により国立公文書館等に移管されたもの
三  第十四条第四項の規定により国立公文書館の設置する公文書館に移管されたもの
四  法人その他の団体(国及び独立行政法人等を除く。以下「法人等」という。)又は個人から国立公文書館等に寄贈され、又は寄託されたもの
 この法律において「公文書等」とは、次に掲げるものをいう。
一  行政文書
二  法人文書
三  特定歴史公文書等
 

第八条 (移管又は廃棄)
 行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、第五条第五項の規定による定めに基づき、国立公文書館等に移管し、又は廃棄しなければならない。
 行政機関(会計検査院を除く。以下この項、第四項、次条第三項、第十条第三項、第三十条及び第三十一条において同じ。)の長は、前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない。この場合において、内閣総理大臣の同意が得られないときは、当該行政機関の長は、当該行政文書ファイル等について、新たに保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
 行政機関の長は、第一項の規定により国立公文書館等に移管する行政文書ファイル等について、第十六条第一項第一号に掲げる場合に該当するものとして国立公文書館等において利用の制限を行うことが適切であると認める場合には、その旨の意見を付さなければならない。
 内閣総理大臣は、行政文書ファイル等について特に保存の必要があると認める場合には、当該行政文書ファイル等を保有する行政機関の長に対し、当該行政文書ファイル等について、廃棄の措置をとらないように求めることができる。
 

第十一条 (法人文書の管理に関する原則)
 独立行政法人等は、第四条から第六条までの規定に準じて、法人文書を適正に管理しなければならない。
 独立行政法人等は、法人文書ファイル等(能率的な事務又は事業の処理及び法人文書の適切な保存に資するよう、相互に密接な関連を有する法人文書を一の集合物にまとめたもの並びに単独で管理している法人文書をいう。以下同じ。)の管理を適切に行うため、政令で定めるところにより、法人文書ファイル等の分類、名称、保存期間、保存期間の満了する日、保存期間が満了したときの措置及び保存場所その他の必要な事項(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第五条 に規定する不開示情報に該当するものを除く。)を帳簿(以下「法人文書ファイル管理簿」という。)に記載しなければならない。ただし、政令で定める期間未満の保存期間が設定された法人文書ファイル等については、この限りでない。
 独立行政法人等は、法人文書ファイル管理簿について、政令で定めるところにより、当該独立行政法人等の事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。
 独立行政法人等は、保存期間が満了した法人文書ファイル等について、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等に移管し、それ以外のものにあっては廃棄しなければならない。
 独立行政法人等は、前項の規定により国立公文書館等に移管する法人文書ファイル等について、第十六条第一項第二号に掲げる場合に該当するものとして国立公文書館等において利用の制限を行うことが適切であると認める場合には、その旨の意見を付さなければならない。
 

第十五条(特定歴史公文書等の保存等)
 国立公文書館等の長(国立公文書館等が行政機関の施設である場合にあってはその属する行政機関の長、国立公文書館等が独立行政法人等の施設である場合にあってはその施設を設置した独立行政法人等をいう。以下同じ。)は、特定歴史公文書等について、第二十五条の規定により廃棄されるに至る場合を除き、永久に保存しなければならない。
 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等について、その内容、保存状態、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。
 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等に個人情報(生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。)が記録されている場合には、当該個人情報の漏えいの防止のために必要な措置を講じなければならない。
 国立公文書館等の長は、政令で定めるところにより、特定歴史公文書等の分類、名称、移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名、移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期及び保存場所その他の特定歴史公文書等の適切な保存を行い、及び適切な利用に資するために必要な事項を記載した目録を作成し、公表しなければならない。
 

第十六条 (特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱い)
 国立公文書館等の長は、当該国立公文書館等において保存されている特定歴史公文書等について前条第四項の目録の記載に従い利用の請求があった場合には、次に掲げる場合を除き、これを利用させなければならない。
一  当該特定歴史公文書等が行政機関の長から移管されたものであって、当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
 イ 行政機関情報公開法第五条第一号 に掲げる情報
 ロ 行政機関情報公開法第五条第二号 又は第六号 イ若しくはホに掲げる情報
 ハ 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
 ニ 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
二  当該特定歴史公文書等が独立行政法人等から移管されたものであって、当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
 イ 独立行政法人等情報公開法第五条第一号 に掲げる情報
 ロ 独立行政法人等情報公開法第五条第二号 又は第四号 イからハまで若しくはトに掲げる情報
三  当該特定歴史公文書等が国の機関(行政機関を除く。)から移管されたものであって、当該国の機関との合意において利用の制限を行うこととされている場合
四  当該特定歴史公文書等がその全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法人等又は個人から寄贈され、又は寄託されたものであって、当該期間が経過していない場合
五  当該特定歴史公文書等の原本を利用に供することにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該特定歴史公文書等を保存する国立公文書館等において当該原本が現に使用されている場合
 国立公文書館等の長は、前項に規定する利用の請求(以下「利用請求」という。)に係る特定歴史公文書等が同項第一号又は第二号に該当するか否かについて判断するに当たっては、当該特定歴史公文書等が行政文書又は法人文書として作成又は取得されてからの時の経過を考慮するとともに、当該特定歴史公文書等に第八条第三項又は第十一条第五項の規定による意見が付されている場合には、当該意見を参酌しなければならない。
 国立公文書館等の長は、第一項第一号から第四号までに掲げる場合であっても、同項第一号イからニまで若しくは第二号イ若しくはロに掲げる情報又は同項第三号の制限若しくは同項第四号の条件に係る情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、利用請求をした者に対し、当該部分を除いた部分を利用させなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
 

第十八条 (第三者に対する意見書提出の機会の付与等)
 利用請求に係る特定歴史公文書等に国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び利用請求をした者以外の者(以下この条において「第三者」という。)に関する情報が記録されている場合には、国立公文書館等の長は、当該特定歴史公文書等を利用させるか否かについての決定をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他政令で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。
 国立公文書館等の長は、第三者に関する情報が記録されている特定歴史公文書等の利用をさせようとする場合であって、当該情報が行政機関情報公開法第五条第一号 ロ若しくは第二号 ただし書に規定する情報又は独立行政法人等情報公開法第五条第一号 ロ若しくは第二号 ただし書に規定する情報に該当すると認めるときは、利用させる旨の決定に先立ち、当該第三者に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他政令で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、当該第三者の所在が判明しない場合は、この限りでない。
 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等であって第十六条第一項第一号ハ又はニに該当するものとして第八条第三項の規定により意見を付されたものを利用させる旨の決定をする場合には、あらかじめ、当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他政令で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
 国立公文書館等の長は、第一項又は第二項の規定により意見書を提出する機会を与えられた第三者が当該特定歴史公文書等を利用させることに反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、当該特定歴史公文書等を利用させる旨の決定をするときは、その決定の日と利用させる日との間に少なくとも二週間を置かなければならない。この場合において、国立公文書館等の長は、その決定後直ちに、当該意見書(第二十一条第二項第二号において「反対意見書」という。)を提出した第三者に対し、利用させる旨の決定をした旨及びその理由並びに利用させる日を書面により通知しなければならない。
 

第十九条 (利用の方法)
 国立公文書館等の長が特定歴史公文書等を利用させる場合には、文書又は図画については閲覧又は写しの交付の方法により、電磁的記録についてはその種別、情報化の進展状況等を勘案して政令で定める方法により行う。ただし、閲覧の方法により特定歴史公文書等を利用させる場合にあっては、当該特定歴史公文書等の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときに限り、その写しを閲覧させる方法により、これを利用させることができる。