特定農林水産物等の名称の保護に関する法律

(平成26年6月25日法律第84号 施行:平成27年6月1日)
 
 第 一 章 総  則
第一条(目的)
 この法律は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することにより、特定農林水産物等の生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、併せて需要者の利益を保護することを目的とする。
 
第二条(定義)
 この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第九項に規定する再生医療等製品に該当するものを除く。
農林水産物(食用に供されるものに限る。)
飲食料品(前号に掲げるものを除く。)
農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
 この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。
特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。
品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。
 この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。
 この法律において「生産」とは、農林水産物等が出荷されるまでに行われる一連の行為のうち、農林水産物等に特性を付与し、又は農林水産物等の特性を保持するために行われる行為をいい、「生産地」とは、生産が行われる場所、地域又は国をいい、「生産業者」とは、生産を業として行う者をいう。
 この法律において「生産者団体」とは、生産業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とする団体(法人でない団体にあっては代表者又は管理人の定めのあるものに限り、法令又は定款その他の基本約款において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)であって、農林水産省令で定めるものをいう。
 この法律において「生産行程管理業務」とは、生産者団体が行う次に掲げる業務をいう。
農林水産物等について第七条第一項第二号から第八号までに掲げる事項を定めた明細書(以下単に「明細書」という。)の作成又は変更を行うこと。
明細書を作成した農林水産物等について当該生産者団体の構成員たる生産業者が行うその生産が当該明細書に適合して行われるようにするため必要な指導、検査その他の業務を行うこと。
前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
 
 第 二 章 特定農林水産物等の名称の保護
第三条(地理的表示)
 第六条の登録(次項(第二号を除く。)及び次条第一項において単に「登録」という。)に係る特定農林水産物等を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する者は、当該特定農林水産物等又はその包装若しくは容器若しくは広告、価格表若しくは取引書類(電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により提供されるこれらを内容とする情報を含む。)(以下「包装等」という。)に地理的表示を使用することができる。
 前項の規定による場合を除き、何人も、登録に係る特定農林水産物等が属する区分(確立された農林水産物等に関する国際分類その他の事情を勘案して農林水産大臣が定める農林水産物等の区分をいう。以下同じ。)に属する農林水産物等若しくはこれを主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はこれらの包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又はこれに類似する表示若しくはこれと誤認させるおそれのある表示(以下この項及び第五条第一号において「類似等表示」という。)を使用してはならない。ただし、次に掲げる場合には、この限りでない。
登録に係る特定農林水産物等を主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又は類似等表示を使用する場合
第六条の登録の日(当該登録に係る第七条第一項第三号に掲げる事項について第十六条第一項の変更の登録があった場合にあっては、当該変更の登録の日。次号及び第四号において同じ。)前の商標登録出願(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって当該出願に係る商標の使用(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二条第三項に規定する使用をいう。以下この号及び次号において同じ。)をする目的で行われたものを除く。)に係る登録商標(同法第二条第五項に規定する登録商標をいう。以下同じ。)に係る商標権者その他同法の規定により当該登録商標の使用をする権利を有する者が、その商標登録に係る指定商品又は指定役務(同法第六条第一項の規定により指定した商品又は役務をいう。)について当該登録商標の使用をする場合
登録の日前から商標法その他の法律の規定により商標の使用をする権利を有している者が、当該権利に係る商品又は役務について当該権利に係る商標の使用をする場合(前号に掲げる場合を除く。)
登録の日前から不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく登録に係る特定農林水産物等が属する区分に属する農林水産物等若しくはその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示と同一の名称の表示若しくは類似等表示を使用していた者及びその業務を承継した者が継続して、又はこれらの者から直接若しくは間接に当該農林水産物等(これらの表示が付されたもの又はその包装、容器若しくは送り状にこれらの表示が付されたものに限る。)を譲り受け、若しくはその引渡しを受けた者が、当該農林水産物等又はその包装等にこれらの表示を使用する場合(当該特定農林水産物等の登録の日から起算して七年を経過する日以後は、当該農林水産物等の生産地の全部が当該特定農林水産物等の生産地内にある場合であって、当該農林水産物等に当該特定農林水産物等との混同を防ぐのに適当な表示がなされているときに限る。)
前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める場合
 
第六条(特定農林水産物等の登録)
 生産行程管理業務を行う生産者団体は、明細書を作成した農林水産物等が特定農林水産物等であるときは、当該農林水産物等について農林水産大臣の登録を受けることができる。
 
第七条(登録の申請)
 前条の登録(第十五条、第十六条、第十六条の二第一項ただし書、第十七条第二項及び第三項並びに第二十二条第一項第一号ニを除き、以下単に「登録」という。)を受けようとする生産者団体は、農林水産省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を農林水産大臣に提出しなければならない。
生産者団体の名称及び住所並びに代表者(法人でない生産者団体にあっては、その代表者又は管理人)の氏名
当該農林水産物等の区分
当該農林水産物等の名称
当該農林水産物等の生産地
当該農林水産物等の特性
当該農林水産物等の生産の方法
第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等を特定するために必要な事項
第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等について農林水産省令で定める事項
前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める事項
 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
明細書
生産行程管理業務の方法に関する規程(以下「生産行程管理業務規程」という。)
前二号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める書類
 生産行程管理業務を行う生産者団体は、共同して登録の申請をすることができる。
 農林水産大臣は、登録の申請があったときは、遅滞なく、第一項第一号から第三号までに掲げる事項その他農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。
 
第七条の二(登録の申請の補正)
 農林水産大臣は、前条第一項の申請書若しくは同条第二項各号に掲げる書類に形式上の不備があり、又は当該申請書若しくは書類に記載すべき事項のうち重要なものの記載が不十分であると認めるときは、相当の期間を指定して、登録の申請の補正をすべきことを命ずることができる。
 農林水産大臣は、前項の規定により登録の申請の補正をすべきことを命じられた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないときは、その登録の申請を却下することができる。
 
第八条(登録の申請の公示等)
 農林水産大臣は、登録の申請を受理したとき(前条第一項の規定により申請の補正をすべきことを命じた場合にあっては、その補正が行われたとき)は、遅滞なく、第七条第一項第一号から第八号までに掲げる事項その他必要な事項を公示しなければならない。
 農林水産大臣は、前項の規定による公示の日から三月間、第七条第一項の申請書並びに同条第二項第一号及び第二号に掲げる書類を公衆の縦覧に供するとともに、農林水産省令で定めるところにより、インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
 
第九条(意見書の提出等)
 前条第一項の規定による公示があったときは、何人も、当該公示の日から三月以内に、当該公示に係る登録の申請について、農林水産大臣に意見書を提出することができる。
 農林水産大臣は、前項の規定による意見書の提出があったときは、当該意見書の写しを登録の申請をした生産者団体に送付しなければならない。
 
第十一条(学識経験者の意見の聴取)
 農林水産大臣は、第九条第一項に規定する期間が満了したときは、農林水産省令で定めるところにより、登録の申請が第十三条第一項第二号から第四号までに掲げる場合に該当するかどうかについて、学識経験を有する者(以下この条において「学識経験者」という。)の意見を聴かなければならない。
 前項の場合において、農林水産大臣は、第九条第一項の規定により提出された意見書の内容を学識経験者に示さなければならない。
 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、必要があると認めるときは、登録の申請をした生産者団体又は第九条第一項の規定により意見書を提出した者その他の関係者から意見を聴くことができる。
 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、その意見を求められた事案に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
 
第二十三条(外国の特定農林水産物等の指定)
 農林水産大臣は、我が国がこの法律に基づく特定農林水産物等の名称の保護に関する制度と同等の水準にあると認められる特定農林水産物等の名称の保護に関する制度(以下「同等制度」という。)を有する外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下この項において同じ。)であって、次の各号のいずれにも該当するもの(以下「締約国」という。)と相互に特定農林水産物等の名称の保護を図るため、当該締約国の同等制度によりその名称が保護されている当該締約国の特定農林水産物等について指定をすることができる。
次に掲げる事項をその内容に含む条約その他の国際約束を我が国と締結していること。
 イ 当該外国が同等制度により我が国の特定農林水産物等の名称を保護すべきものとされていること。
 ロ 我が国がこの法律により当該外国の特定農林水産物等の名称を保護すべきものとされていること。
前号の国際約束において保護すべきものとされている我が国の特定農林水産物等の名称について、その適切な保護を我が国又は当該特定農林水産物等に係る登録生産者団体が当該外国の権限のある機関に要請した場合には、必要な措置を講ずると認められること。
 前項の指定(以下単に「指定」という。)は、次に掲げる事項を定めてするものとする。
当該特定農林水産物等の区分
当該特定農林水産物等の名称
当該特定農林水産物等の生産地
当該特定農林水産物等の特性
前各号に掲げるもののほか、当該特定農林水産物等の生産の方法その他の当該特定農林水産物等を特定するために必要な事項
前各号に掲げるもののほか、当該特定農林水産物等について農林水産省令で定める事項
 
第三十条(指定に係る特定農林水産物等の地理的表示)
 指定に係る特定農林水産物等は、第三条及び第十三条第一項第三号ロの規定の適用については、登録に係る特定農林水産物等とみなす。この場合において、第三条第一項中「第六条の登録(次項(第二号を除く。)及び次条第一項において単に「登録」という。)」とあるのは「第二十三条第一項の指定(次項において単に「指定」という。)」と、同条第二項第二号中「第六条の登録の日(当該登録に係る第七条第一項第三号」とあるのは「指定の日(指定に係る第二十三条第二項第二号」と、「第十六条第一項の」とあるのは「第三十一条第一項の規定による」と、「変更の登録」とあるのは「指定の変更」と、同項第三号中「登録の日」とあるのは「指定の日」と、同項第四号中「登録の日」とあるのは「指定の日」と、「経過する日以後は、当該農林水産物等の生産地の全部が当該特定農林水産物等の生産地内にある場合であって、当該農林水産物等に当該特定農林水産物等との混同を防ぐのに適当な表示がなされている」とあるのは「経過しない場合であって、当該農林水産物等の生産が締約国(第二十三条第一項に規定する締約国をいう。)外で行われた」とする。
 
第六章 罰則(第39条〜第43条)
第四十一条
 第十一条第四項(第十五条第二項、第十六条第三項及び第二十二条第二項において準用する場合を含む。)及び第二十七条第五項(第三十一条第二項及び第三十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。