パリ条約

第四条
A(1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継人は、他の同盟国において出願をすることに関し、以下に定める期間中優先権を有する。
(2) 各同盟国の国内法令又は同盟国の間で締結された二国間若しくは多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められる。
(3) 正規の国内出願とは、結果のいかんを間わず、当該国に出願をした日付を確定するために十分なすべての出願をいう。
B すなわち、A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の出願、当該発明の公表又は実施、当該意匠に係る物品の販売、当該商標の使用等によつて不利な取扱いを受けないものとし、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利又は使用の権能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第三者が取得した権利に関しては、各同盟国の国内法令の定めるところによる。
C(1) A(1)に規定する優先期間は、特許及び実用新案については十二箇月、意匠及び商標については六箇月とする。
(2) 優先期間は、最初の出願の日から開始する。出願の日は、期間に算入しない。
(3) 優先期問は、その末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受理するために開いていない日に当たるときは、その日の後の最初の就業日まで延長される。
(4) (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は、先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として、最初の出願とみなされ、その出願の日は、優先期間の初日とされる。この場合において、先の出願は、優先権の主張の基礎とすることができない。
D(1) 最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は、その出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は、遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。
(2) (1)の日付及び国名は、権限のある官庁が発行する刊行物(特に特許及びその明細書に関するもの)に掲載する。
(3) 同盟国は、優先権の申立てをする者に対し、最初の出願に係る出願書類(明細書、図面等を含む。)の謄本の提出を要求することができる。最初の出願を受理した主管庁が認証した謄本は、いかなる公証をも必要とせず、また、いかなる場合にも、後の出願の日から三箇月の期間内においてはいつでも、無料で提出することができる。その謄本には、その・主管庁が交付する出願の日付を証明する書面及び訳文を添付するよう要求することができる。
(4) 出願の際には、優先権の申立てについて他の手続を要求することができない。各同盟国は、この条に定める手続がされなかつた場合の効果を定める。ただし、その効果は、優先権の喪失を限度とする。
(5) 出願の後においては、他の証拠書類を要求することができる。
 最初の出願に某づいて優先権を主張する者は、その最初の出願の番号を明示するものとし、その番号は、(2)に定める方法で公表される。
E(1) いずれかの同盟国において実用新案登録出願に基づく優先権を主張して意匠登録出願をした場合には、優先期間は、意匠について定められた優先期間とする。
(2) なお、いずれの同盟国においても、特許出願に基づく優先権を主張して実用新案登録出願をすることができるものとし、また、実用新案登録出願に基づく優先権を主張して特許出願をすることもできる。
F いずれの同盟国も、特許出願人が二以上の優先権(二以上の国においてされた出願に基づくものを含む。)を主張することを理由として、又は優先権を主張して行つた特許出願が優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかつた構成部分を含むことを理由として、当該優先権を否認し、又は当該特許出願について拒絶の処分をすることができない。ただし、当該同盟国の法令上発明の単一性がある場合に限る。 優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかつた構成部分については、通常の条件に従い、後の出願が優先権を生じさせる。
G(1) 審査により特許出願が複合的であることが明らかになつた場合には、特許出願人は、その特許出願を二以上の出願に分割することができる。この場合において、特許出願人は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優先権の利益があるときは、これを保有する。
(2) 特許出願人は、また、自己の発意により、特許出願を分割することができる。この場合においても、特許出願人は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優先権の利益があるときは、これを保有する。各同盟国は、その分割を認める場合の条件を定めることができる。
H 優先権は、発明の構成部分で当該優先権の主張に係るものが最初の出願において請求の範囲内のものとして記載されていないことを理由としては、否認することができない。ただし、最初の出願に係る出願書類の全体により当該構成部分が明らかにされている場合に限る。
I(1) 出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をもすることができる同盟国においてされた発明者証の出願は、特許出願の場合と同一の条件でこの条に定める優先権を生じさせるものとし、その優先権は、特許出願の場合と同一の効果を有する。
(2) 出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をもすることができる同盟国においては、発明者証の出願人は、特許出願について適用されるこの条の規定に従い、特許出願、実用新案登録出願又は発明者証の出願に基づく優先権の利益を享受する。