民事保全法

 
第五十三条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
 不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。
 第四十七条第二項及び第三項〈登記をする方法による仮差押えの執行〉並びに民事執行法第四十八条第二項〈登記官による謄本送付〉、第五十三条〈不動産の滅失等に基づく手続の取消し〉及び第五十四条〈登記抹消の嘱託〉の規定は、前二項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。
 
第五十四条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)
 前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。
 
第五十八条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
 第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。
 前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
 第五十三条第二項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による。
 第五十三条第二項の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第一項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。
 
第五十九条(登記の抹消の通知)
 仮処分の債権者が前条第二項又は第四項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。
 前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から一週間を経過した時に到達したものとみなす。
 
第六十条(仮処分命令の更正等)
 保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義 における権利の表示と符合しないときは、第五十三条第二項の処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならない。
 前項の規定による更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
 第一項の規定による更正決定が確定したときは、裁判所書記官は、保全仮登記の更正を嘱託しなければならない。
 
第六十一条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
 前三条の規定は、第五十四条に規定する処分禁止の仮処分の効力について準用する。