欧州特許付与に関する条約施行規則

2001年6月28日改正 2002年1月2日施行
第I部 条約第I部施行規則
 
第I章 欧州特許庁の言語
第1規則 書面審理における手続語に関する規定の特例
(1) 欧州特許庁における書面手続においては,如何なる者も,欧州特許庁の何れかの公用語を使用することができる。第14条(4)に規定する翻訳文は,欧州特許庁の何れかの公用語で提出することができる。
(2) 欧州特許出願又は欧州特許に対する補正書は,手続語で提出しなければならない。
(3) 欧州特許庁において証拠の目的に使用されるべき書類,特に刊行物は,如何なる言語によっても提出することができる。ただし,欧州特許庁は,その公用語の何れか1による翻訳文を1月以上の所定の期間内に提出することを要求することができる。
 
第2規則 口頭審理における手続語に関する規定の特例
(1) 欧州特許庁における口頭審理の何れの当事者も,かかる口頭審理について指定された日の少なくとも1月前に欧州特許庁に通知するか又は手続語への通訳の用意をすることを条件として,手続語の代わりに,欧州特許庁の他の公用語の1を使用することができる。同様に何れの当事者も,手続語への通訳の用意をすることを条件として,締約国の公用語の何れか1を使用することができる。欧州特許庁は,本項の規定の特例を許容することができる。
(2) 口頭審理の際に,欧州特許庁の職員は,手続語の代わりに,欧州特許庁の他の公用語の1を使用することができる。
(3) 証拠調べの場合は,欧州特許庁又は締約国の公用語の何れか1により適切に自己の考えを述べることができない審問を受ける当事者,証人又は鑑定人は,他の言語を使用することができる。証拠調べが手続の一方の当事者の請求により決定された場合は,欧州特許庁の公用語以外の言語で自己の意見を述べる審問を受ける当事者,証人又は鑑定人については,請求した当事者が手続語への通訳の用意をした場合に限り,審問することができる。ただし,欧州特許庁は,その公用語の他の1への通訳を許容することができる。
(4) 当事者と欧州特許庁が合意した場合は,口頭審理において,如何なる言語も使用することができる。
(5) 欧州特許庁は,必要な場合は,自らの費用で手続語,又は,適当である場合は,その他の公用語への通訳を用意する。ただし,この通訳が手続の当事者の一方の義務である場合はこの限りでない。
(6) 口頭審理において欧州特許庁の職員,手続の当事者,証人及び鑑定人により欧州特許庁の公用語の何れか1でなされた陳述は,使用された言語で調書に記載する。他の何れかの言語による陳述は,翻訳した公用語で記載しなければならない。欧州特許出願又は欧州特許の明細書若しくはクレームの補正は,手続語で調書に記載する。)
 
第3規則 ([削除])
 
第4規則 欧州分割出願の言語
 欧州分割出願又は第14条(2)に規定する場合は,その翻訳文は,先の欧州特許出願における手続語で提出しなければならない。)
 
第5規則 翻訳文の証明
  書類の翻訳文を提出しなければならない場合は,欧州特許庁は,翻訳文が原本に対応している旨の証明書を指定された期間内に提出することを要求することができる。期間内に証明書が提出されなかった場合は,条約に別段の定めがある場合を除き,その書類は,受理されたものとみなされない。)
 
第6規則 期間及び手数料の減額
(1) 条約第14条(2)に規定する翻訳文は,欧州特許出願の出願後3月以内であって優先権主張日の後13月よりも遅くない期間内に提出しなければならない。ただし,翻訳文が欧州分割出願又は第61条(1)(b)に基づく新たな欧州特許出願に関する場合は,その翻訳文は,かかる出願の提出後1月以内にいつでも,提出することができる。
(2) 第14条(4)に規定する翻訳文は,書類の提出後1月以内に提出しなければならない。書類が異議申立書又は審判請求書である場合は,この期間は,適当な場合には,異議申立期間又は審判請求期間の満了まで延長する。
(3) 第14条(2)及び(4)に規定する選択を行った特許出願人,特許権者又は異議申立人については,出願手数料,審査手数料,異議申立手数料又は審判請求手数料の減額を認めなければならない。減額は,手数料総額の百分率により,手数料に関する規則に定める。
 
第7規則 欧州特許出願の翻訳文の法的真正
 反証のない限り,欧州特許庁は,欧州特許出願又は欧州特許の対象が出願時の出願内容を超えているか否かを決定するに当り,第14条(2)に規定する翻訳文が出願の元の本文に一致するものとして扱うことができる。
 
第II章 欧州特許庁の組織
第8規則 特許分類
(1) 欧州特許庁は次のものを用いる。
(a)
1971年3月24日の国際特許分類に関するストラスブール協定が発効するまでは1954年12月19日の発明のための特許の国際分類に関する欧州条約第1条の特許分類
(b)
前記のストラスブール協定の発効後においては同協定第1条の分類
(2) (1)に定める分類を以下「国際分類」という。
 
第9規則 第1審の部課に対する職務の割当
(1) 欧州特許庁長官は,調査部,審査部及び異議部の数を定める。欧州特許庁長官は,国際分類を参照してこれらの部に職務を割り当て,また,必要な場合は,欧州特許出願又は欧州特許の分類を国際分類に従って決定する。
(2) 条約に基づき受理課,調査部,審査部,異議部及び法規部に与えられた責任に加えて,欧州特許庁長官は,これらの部課に更に職務を割り当てることができる。
(3) 欧州特許庁長官は,技術的又は法律的資格を有する審査官でない職員に対して審査部又は異議部に属し,技術的又は法律的問題点に関係しない個々の職務を行わせることができる。
(4) 欧州特許庁長官は,異議部の記録課の1に第104条(2)に規定する費用額を確定する専属的な責任を与えることができる。
 
第10規則 第2審の部に対する職務の割当及びその構成員の指名
(1) 各事業年度の開始前に,職務が審判部に割り当てられ,かつ,審判部及び拡大審判部の正規の構成員及びその代理構成員が指名される。審判部の構成員は,2以上の審判部の構成員として指名されることができる。これらの処置は,必要な場合には事業年度中に変更することができる。
(2) (1)に規定する措置は,議長として行動する欧州特許庁長官,審判担当副長官,審判長及び事業年度について審判部の構成員の全員により選ばれた審判部の他の3名の構成員から成る合議体によってとられなければならない。この合議体は,少なくとも5名の構成員が出席する場合にのみ決定をすることができる。この構成員には,欧州特許庁長官又は副長官及び2の審判部の審判長が含まれなければならない。決定は多数決により,可否同数の場合には,議長が決定しなければならない。
(3) (2)に規定する合議体は,2以上の審判部の間の職務割当に関する紛争について決定しなければならない。
(4) 管理理事会は,第134条(8)(c)の規定に基づく職務を審判部に割り当てることができる。
 
第11規則 第2審の部の手続規則
  第10規則(2)に規定する合議体は,審判部の手続規則を採択しなければならない。拡大審判部は,それ自身の手続規則を採択する。
 
第12規則 欧州特許庁の管理組織
(1) 審査部及び異議部は,組織上まとめられて局を構成するものとし,その数は,欧州特許庁長官によって定められる。
(2) 局,法規部,審判部及び拡大審判部,並びに欧州特許庁の管理的事務部門は,組織上まとめられて総局を構成する。受理課及び調査部は,組織上まとめられて総局を構成する。
(3) 各総局は,副長官が監督する。副長官の総局への任命は,欧州特許庁長官の意見を求めた後に,管理理事会が決定する。
 
第II部 条約第II部施行規則
 
第I章 出願人又は特許権者が権利を有さない場合の手続
第13規則 手続の中止
(1) 第三者が欧州特許を受ける権利を有する旨の決定を求めるために出願人に対して手続を開始した旨の証明を欧州特許庁に提出した場合は,欧州特許庁は,特許付与手続を中止する。ただし,第三者が当該手続の続行に同意した場合は,この限りでない。かかる同意は,書面により欧州特許庁に通知しなければならない。この同意は,取り消すことができない。ただし,特許付与手続は,欧州特許出願の公開前には中止することができない。
(2) 欧州特許を受ける権利に関する手続において決定が確定した旨の証明が欧州特許庁に提出された場合は,欧州特許庁は,出願人及び当事者に対し,通知に指定された日から特許付与手続が再開される旨を通知しなければならない。ただし,第61条(1)(b)の規定により新たな欧州特許出願がすべての指定締約国について提出されている場合はこの限りでない。決定が第三者に有利である場合は,第三者が特許付与手続の再開を請求する場合を除き,その決定の確定後3月を経過した後においてのみ手続を再開することができる。
(3) 手続を中止する旨の決定をするとき又はその後に,欧州特許庁は,出願人に対して開始された(1)に規定する手続が如何なる段階にあるかを問わず,欧州特許庁に係属している手続を再開しようとする日を定めることができる。この日は,第三者,出願人及び当事者に通知される。決定が確定した旨の証明がこの日までに提出されなかった場合は,欧州特許庁は,手続を続行することができる。
(4) 第三者が欧州特許権者に対し欧州特許を受ける権利を有する旨の決定を求める手続を開始した旨の証拠を,異議申立手続中又は異議申立期間内に,欧州特許庁に提出した場合は,欧州特許庁は,その第三者が当該手続を続行することに同意する場合を除き,異議申立手続を中止する。この同意は,書面で欧州特許庁に送達しなければならず,取り消すことができない。ただし,手続の中止は,異議部が異議申立を認容すべきものとみなすまでは命じてはならない。(2)及び(3)の規定を準用する。
(5) 手続中止の日に進行中の期間は,更新手数料納付のための期間を除き,その中止によって進行を中断する。未だ経過していない期間は,手続再開の日から進行を開始する。ただし,手続再開の後になお進行すべき期間は,2月以上とする。
 
第14規則 欧州特許出願の取下に関する選択の制限
  第三者が欧州特許を受ける権利に関する手続を開始したことを欧州特許庁に証明した時から欧州特許庁が特許付与手続を再開する日までの間,欧州特許出願及び締約国の指定の何れも取り下げることができない。
 
第15規則 出願する権利を有する者による新たな欧州特許出願
(1) 決定が確定して欧州特許を受ける権利を有すると判断された者が第61条(1)(b)の規定により新たな欧州特許出願をした場合は,原欧州特許出願は,決定がなされ又は承認された新たな欧州特許出願において指定されている締約国については,新たな欧州特許出願の出願日に取り下げられたものとみなす。
(2) 出願手数料及び調査手数料は,新たな欧州特許出願については,その出願後1月以内に支払わなければならない。なお,指定手数料の納付は,新たな欧州特許出願について欧州特許公報が欧州調査報告の公開を告示した日より6月以内にしなければならない。
(3) 第77条(3)及び(5)に規定する欧州特許出願を送達するための期間は,新たな欧州特許出願については,その実際の出願日から4月とする。
 
第16規則 決定の確定による権利の部分的移転
(1) 決定が確定して第三者が欧州特許出願に開示された事項の一部のみについて欧州特許を受ける権利を有すると判断された場合は,第61条及び第15規則の規定をこの一部について準用する。
(2) 適当と認められる場合は,原欧州特許出願は,決定がなされ又は承認された指定締約国については,他の指定締約国についてのクレーム,明細書及び図面と異なったものを含むものとする。
(3) 第三者が第99条(5)の規定に従って指定締約国の1国又は数国について元の権利者に代わった場合は,異議申立手続において維持された特許は,これらの指定締約国については,他の指定締約国についてのクレーム,明細書及び図面とは異なったものを含むことができる。
 
第II章 発明者の記載
第17規則 発明者の表示
(1) 発明者の表示は,欧州特許付与のための願書において提出する。ただし,出願人が発明者でないか又は単独の発明者でない場合は,表示は,別の書類で提出する。表示は,発明者の氏名,発明者の完全な宛先及び第81条に規定する陳述を記載し,出願人又はその代理人が署名する。
(2) 欧州特許庁は,発明者表示の正確性については確認しない。
(3) 出願人が発明者でないか又は単独の発明者でない場合は,欧州特許庁は,発明者を表示する書類に記載された情報及び第128条(5)にいう情報を表示された発明者に通知する。
(4) 出願人及び発明者は,(3)の通知がなかったこと又は通知に含まれる誤りの何れについてもそれを問題とすることができない。
 
第18規則 発明者掲載の公表
(1) 発明者として表示された者は,その掲載される権利を放棄する旨を欧州特許庁へ書面で通知している場合を除き,公開された欧州特許出願及び欧州特許明細書に発明者として掲載される。
(2) 第三者が,特許出願人又は特許権者に対しその第三者を発明者として表示することを要求する確定した決定を欧州特許庁に提出した場合は,(1)の規定を適用する。
 
第19規則 発明者の表示の訂正
(1) 誤った発明者の表示は,請求に基づいて訂正することができ,この請求には誤って表示された者の同意書,及び,かかる請求が特許出願人又は特許権者によって提出されたのではない場合は,それらの者の同意書を添付する。第17規則の規定を準用する。
(2) 誤った発明者表示が欧州特許登録簿に登録され又は欧州特許公報で告示された場合は,その登録又は告示は,訂正される。
(3) (2)の規定は,誤った発明者の表示の取消に準用する。
 
第III章 移転,ライセンス及びその他の権利の登録
第20規則 移転の登録
(1) 欧州特許出願の移転は,利害関係人から請求があり,かつ,移転されたことを欧州特許庁に対して納得させ得る書類が提出されたときに,欧州特許登録簿に記録する。
(2) この請求は,事務手数料が支払われるまでは提出されたものとみなされない。この請求は,(1)に規定する条件が満たされていない場合にのみ,却下することができる。
(3) 移転は,(1)に規定する書類が提出されたときのみ及び提出された範囲内で,欧州特許庁に対して効力を有する。
 
第21規則 ライセンス及びその他の権利の登録
(1) 第20規則(1)及び(2)の規定は,ライセンスの付与若しくは移転の登録,欧州特許出願に関する対物的権利の設定若しくは移転及び欧州特許出願の執行の法的手段に準用する。
(2) (1)に規定する登録は,請求に基づいて取り消すものとし,請求は,事務手数料が納付されるまでは提出されたものとみなされない。かかる請求は,権利が消滅したことを確定する書類若しくは権利の所有者が登録の取消に同意した旨の宣言の何れかによって裏付けなければならない。請求は,これらの条件が満たされていない場合にのみ,却下することができる。
 
第22規則 ライセンスの登録の特別表示
(1) 欧州特許出願に関するライセンスは,出願人と実施権者が要求する場合は,欧州特許登録簿に排他的ライセンスとして記録する。
(2) 欧州特許出願に関するライセンスは,そのライセンスが欧州特許登録簿に記録されている実施権者によって許諾される場合は,この登録簿にサブライセンスとして記録する。
 
第IV章 博覧会の証明
第23規則 博覧会の証明書
  出願人は,欧州特許出願の日から4月以内に,博覧会における産業財産の保護について責任ある当局によって博覧会に対し交付され,かつ,発明が実際に博覧会において展示されていたことを記載した第55条(2)に規定する証明書を提出しなければならない。この証明書には,博覧会の開会の日,及び,発明の最初の開示が博覧会の開会日と一致しない場合は,最初の開示の日を記載する。この証明書には,上記の当局によって適正に認証された発明の同一性を示す書類を添付しなければならない。
 
第V章 先の欧州特許出願
第23a規則 技術水準としての先願
  欧州特許出願は,第79条(2)の指定手数料が有効に納付された場合にのみ,第54条(3)及び(4)に規定する技術水準を構成するものとみなされる。
 
第VI章 生物工学発明
第23b規則 総則及び定義
(1) 生物工学発明に関する欧州特許出願及び特許において,条約の関連規定は,本章の規定と一致して適用され,かつ解釈されるものとする。生物工学発明の法的保護に関する1998年7月6日付の命令98/44/ECは,これの補足的解釈として使用されるものとする。
(2) 「生物工学発明」とは,生物材料からなる発明若しくはそれを含む発明,又は生物材料が生産されるか,処理されるか,若しくは使用される方法に関する発明である。
(3) 「生物材料」とは,遺伝子情報を含み,1つの生物学的系統において自ら生殖し若しくは生殖され得る如何なる材料をも意味する。
(4) 「植物品種」とは,植物学上の分類で最下位級の単一植物群を意味し,その植物群は品種登録付与の条件を満たしているか否かに拘りなく,
(a)
与えられた遺伝子型,若しくは遺伝子型の組み合わせによる特質の表現に限定され,
(b)
当該特質の少なくとも何れか1つの表現によって他の植物群と区別され,
(c)
変化せずに伝達されるための適合性を有する1つの単位と考えられる。
(5) 植物若しくは動物を生産する方法とは,それが異種交配若しくは淘汰のような専ら自然現象によるものである場合は,本質的に生物学的なものである。
(6) 「微生物学的方法」とは,微生物学的材料を含有し,又はそれに対して実行され,若しくはそれに帰着するすべての方法をいう。
 
第23c規則 特許を受けることができる生物工学発明
  生物工学発明が特許を受けるためには,次の要件に関するものでなければならない。
(a)
既に自然界に発生していたとしても,自然環境より分離され,若しくは技術的方法によって生産された生物材料
(b)
発明の技術的可能性が,特殊な植物又は動物の品種に限定されない場合における植物若しくは動物
(c)
微生物学的若しくは他の技術的な方法,又は植物若しくは動物の品種以外に当該方法によって得られる生産物
 
第23d規則 特許性の例外
  第53条(a)に基づき,欧州特許は特に次に関する生物工学発明には付与されないものとする。
(a)
ヒトをクローン化する方法
(b)
ヒトの生殖細胞系の固有の遺伝子型を変更する方法
(c)
工業目的又は商業目的でヒトの胚を使用すること
(d)
動物の固有の遺伝子型を変更する方法であり,ヒト若しくは動物に対する実質的な医学上の利益なしに動物に苦痛をもたらす方法,及び当該方法に由来する動物
 
第23e規則 人体及びその構成要素
(1) 形成及び発達における様々な段階での人体,及び遺伝子の配列,若しくは部分的配列を含む1つの要素の単なる発見は特許を受けることのできる発明の構成要件とはならない。
(2) 遺伝子の配列若しくは部分的配列を含み,人体より分離された構成要素,又は逆に技術的な方法によって作り出された構成要素は,たとえそれが自然の構成要素と同一の構造であっても,特許を受けることのできる発明を構成する。
(3) 遺伝子配列又は部分的配列の産業上の利用性については,特許出願において開示しなければならない。
 
第III部 条約第III部施行規則
 
第I章 欧州特許出願
第24規則 一般規定
(1) 欧州特許出願は,第75条に規定する当局に書面で直接又は郵便により行うことができる。欧州特許庁長官は,欧州特許出願を他の通信手段によって行うことを許容することができ,それらの通信手段の利用を規制する条件を定めることができる。特に,欧州特許庁長官は,行われた出願の内容を再現し,かつ,施行規則の要件を満たしている確認文書を欧州特許庁が定めた期間内に提出することを要求することができる。
(2) 欧州特許出願がされた当局は,出願を構成する書類に受理日付を付する。その当局は,少なくとも出願番号,書類の性質及び数並びに受理日付を含む受理証を遅滞なく出願人に交付する。
(3) 欧州特許出願が第75条(1)(b)にいう当局にされた場合は,その当局は,出願を構成する書類を受理した旨を遅滞なく欧州特許庁に通知する。その当局は,欧州特許庁に書類の性質及び受理の日,出願番号並びに,優先権が主張されている場合は,優先権主張日を通知する。
(4) 欧州特許庁が締約国の中央産業財産官庁により送達された欧州特許出願を受理した場合は,欧州特許庁は,同庁による出願受理の日を示して,その旨を出願人に通知する。
 
第25規則 欧州分割出願についての規定
(1) 第51規則(4)の規定に従って欧州特許を付与しようとする本文に対して同意するまで出願人は,係属している先の欧州特許出願の分割出願を提出することができる。
(2) 出願手数料及び調査手数料は,各欧州分割出願に対してその出願から1月以内に納付しなければならない。なお,指定手数料の納付は,欧州特許分割出願について欧州特許公報が欧州調査報告の公開を告示した日より6月以内にしなければならない。
 
第II章 出願を規制する規定
第26規則 特許付与を求める願書
(1) 欧州特許の付与を求める願書は,欧州特許庁によって作成された様式で提出しなければならない。出願人は,印刷された様式を第75条(1)に規定する当局において無料で入手することができる。
(2) 願書には,次の事項を記載する。
(a)
欧州特許付与の申立
(b)
明確かつ簡潔に発明の技術的表示を記載し,かつ,あらゆる空想的な名称を除いた発明の名称
(c)
出願人の氏名又は名称,宛先及び国籍並びに出願人の住所又は営業の本拠地が所在する国。自然人の氏名については,姓及び名を記載するものとし,姓を名の前に記載する。法人及び会社を規制する法律によって法人と認められる会社の名称は,その公式の名称を記載する。宛先は,表示された宛先に迅速に郵便配達するための慣習上の要件を満たすように記載する。宛先は,如何なる場合にも,すべての関係する行政単位を含むものとし,住居番号があればそれも含む。電報及びテレックスの宛先並びに電話番号が記載されていることが望ましい。
(d)
出願人が代理人を任命した場合は,(c)の条件に従った代理人の氏名及び事務所の宛先
(e)
場合により,出願が欧州分割出願である旨の表示及び先の欧州特許出願の番号
(f)
 第61条(1)(b)に該当する場合は,原欧州特許出願の番号
(g)
場合により,先の出願の優先権を主張し,かつ先の出願の出願日及び先の出願がなされた国を示す申立
(h)
発明の保護を求める1又は2以上の締約国の指定
(i)
出願人又はその代理人の署名
(j)
願書に添付した書類の目録。この目録には願書と共に提出される明細書,クレーム,図面及び要約の枚数を示すものとする。
(k)
出願人が発明者である場合は,発明者の表示
(3) 2人以上の出願人がある場合は,願書には共通代表者として1人の出願人又は代理人を表示することが望ましい。
 
第27規則 明細書の内容
(1) 明細書は,次のように作成する。
(a)
その発明の関連する技術分野を明示する。
(b)
出願人の知る限りにおいてその発明の理解,欧州調査報告の作成及び審査に有用であると思われる背景技術を表示する。また,その背景技術について記述している文献を引用することが望ましい。
(c)
技術的課題(技術的課題として明白に記述されていない場合であっても)及びその解決方法を理解することができるように,クレームに記載されている発明を開示し,背景技術との関連においてその発明の有利な効果を記載する。
(d)
図面がある場合には,図面について簡単に図解する。
(e)
クレームに記載されている発明を実施する少なくとも1の方法を詳細に記載する。その記載は,適当なときは実施例を用いて,図面があるときはその図面を引用して行う。
(f)
発明の説明又は性質から明らかでない場合には,その発明の対象の産業上の利用方法を明示的に記載する。
(2) 明細書は,発明の性質上異なる記述方法又は順序により発明を一層良く理解することができるようになり及び表現が一層簡潔となる場合を除くほか,(1)に規定する記述方法及び順序で記載する。
 
第27a規則 ヌクレオチド又はアミノ酸配列に関する欧州特許出願の要件
(1) ヌクレオチド又はアミノ酸配列が欧州特許出願に開示されている場合は,明細書には,ヌクレオチド又はアミノ酸配列の標準化表示のために欧州特許庁長官により定められた規則に合致した配列一覧を含める。
(2) 欧州特許庁長官は,書面による出願書類に加えて,(1)に規定する配列一覧を,特許庁長官により定められた記憶媒体で,その記憶媒体に記憶された情報が記載された配列一覧と同一である旨の陳述書を添付して,提出することを要求することができる。
(3) 出願日後に配列一覧が提出され又は訂正された場合は,出願人は,提出され又は訂正された配列一覧には出願時の出願内容を超える事項が含まれていない旨の陳述書を提出する。
(4) 出願日後に提出された配列一覧は,明細書の一部を構成しない。
 
第28規則 生物材料の寄託
(1) 発明が生物材料の使用を伴うか,又は生物材料に関するものである場合において,その生物材料が公衆に入手可能でなく,かつその生物材料を当該技術分野に熟練した者が発明を実施できる程度に欧州特許出願に記載できないときは,その発明は,次の要件を満たすときにのみ第83条の規定に従い開示されているとみなす。
(a)
生物材料の試料が,欧州特許出願の出願日よりも遅くないときに,承認された寄託機関に寄託されたこと
(b)
提出された状態での願書が,生物材料の特徴について出願人に入手可能な関連情報を提供していること
(c)
寄託された生物材料の寄託機関及び受託番号が願書に記載されていること
(d)
生物材料が出願人以外の者によって寄託された場合,その寄託人の氏名と住所が願書に記載されると共に,出願人が欧州特許出願で寄託された生物材料に言及することを寄託人が許可しており,かつ,寄託された生物材料を本規則に従って公衆に入手可能にすることに寄託人が無条件かつ撤回不能の承諾を与えていることを欧州特許庁に納得させる文書が提出されていること
(2) (1)(c)及び,該当する場合は,(1)(d)に規定する情報は,次の期間内に提出することができる。
(a)
欧州特許出願の出願日から,又は,優先権が主張されている場合は,優先日から16月以内。この期間は,出願の公開の技術的準備が完了する前に情報が通知された場合は,遵守されたものとみなす。
(b)
出願の早期公開を求める請求書を提出した日まで
(c)
 第128条(2)の規定に基づき出願書類を閲覧する権利が発生している旨を欧州特許庁が出願人に通知した後1月以内 主たる期限は,これらのうちで最初に満了する期間とする。この情報の通知は,寄託された生物材料が本規則に従って公衆に入手可能になることに対する出願人の無条件かつ撤回不能の承諾を示すものとみなす。
(3) 寄託された生物材料は,欧州特許出願の公開日から如何なる者も,及び,それに先立つ日であっても第128条(2)の規定により出願書類を閲覧する権利を有する如何なる者も,請求により入手可能である。(4)に規定する場合を除き,生物材料の試料が請求をした者(以下「請求人」という。)に分譲されることによって寄託された生物材料の入手が可能となる。 この分譲は,請求人が特許出願人又は特許権者に対して次の義務を負う場合にのみ行われる。即ち,特許出願人又は特許権者が明白に権利を放棄しない限り,特許出願が拒絶され,又は取り下げられ,若しくは取り下げられたものとみなされるときまでは,又は特許が最後に満了する指定締約国において満了する前には,如何なる第三者にも寄託された生物材料若しくはそれに由来する如何なる生物材料をも入手可能にさせず,かつ,これらの生物材料を実験の目的でのみ利用すること。 生物材料を実験の目的でのみ利用する義務は,請求人が強制ライセンスを受けて当該材料を用いている限りでは,適用しない。この強制ライセンスの語は,職権によるライセンス及び特許が付与された発明を公共の利益のために使用する権利を含むものと解する。
(4) 出願の公開のための技術的準備が完了するまでは,出願人は,欧州特許庁に対して,
(a)
欧州特許を付与する旨の告示が公表されるまで,又は,該当する場合は,
(b)
出願が拒絶され,又は取り下げられ,若しくは取り下げられたものとみなされた場合は,出願日から20年間,
(3)に規定する寄託された生物材料が請求人により指名された専門家に試料を分譲することによってのみ入手可能である旨を通知することができる。
(5) 次の者を専門家として指名することができる。
(a)
請求人がその指名は出願人の了承を得ている旨の証拠を請求時に提出した場合は,あらゆる自然人
(b)
欧州特許庁長官によって専門家であると認められたあらゆる自然人 指名には,特許が全指定締約国で満了する日,又は出願が拒絶され,取り下げられ,若しくは取り下げられたものとみなされる場合は,(4)(b)に規定する日まで,専門家が(3)の規定により課される義務を負う旨の専門家から出願人に対する宣言書を添付する。この場合,請求人は,第三者とみなされる。
(6) (3)の規定の適用上,生物材料に由来する生物材料とは,発明を実施するために必須の寄託された生物材料の特徴を依然として示すあらゆる材料のことを言う。(3)に規定する義務は,特許手続のために必要な,生物材料に由来する如何なる生物材料の寄託をも妨げるものではない。
(7) (3)に規定する請求書は,欧州特許庁により認められた様式で欧州特許庁に提出する。欧州特許庁は,その様式上で,生物材料の寄託について言及している欧州特許出願が提出されていること,及び請求人又は請求人によって指名された専門家が生物材料の試料の分譲を受ける権利を有する旨を証明する。欧州特許付与後においても請求書は,欧州特許庁に提出する。
(8) 欧州特許庁は,(7)に規定する証明書と共に請求書の写を寄託機関及び特許出願人若しくは特許権者に送付する。
(9) 欧州特許庁長官は,欧州特許庁公報に寄託機関及び本規則のために認められた専門家の一覧を掲載する。
 
第28a規則 生物材料の新たな寄託
(1) 次の理由により,第28規則(1)に従い寄託された生物材料が,その生物材料が寄託された寄託機関から入手できなくなった場合,即ち
(a)
生物材料がもはや生存していないか,又は
(b)
他の何らかの理由により寄託機関が試料を提供することができない場合, かつ,その生物材料の試料が引き続き入手し得るように第28規則のために認められた他の寄託機関に移管されていなかった場合において,寄託者が寄託機関から生物材料の入手可能性が中断した旨の通知を受け取った日から3月以内に最初に寄託された生物材料を新たに寄託し,かつ欧州特許出願又は欧州特許の番号を記載した寄託機関により発行された寄託の受託書の写が新たな寄託の日から4月以内に欧州特許庁に送付されたときには生物材料の入手可能性の中断は生じなかったものとみなされる。
(2) (1)(a)に規定する場合には新たな寄託は最初の寄託がなされた寄託機関にしなければならず,(1)(b)に規定する場合には新たな寄託は第28規則のために認められた他の寄託機関にすることができる。
(3) 最初の寄託がなされた寄託機関が,全面的に又は寄託された生物材料の試料が属する種類の生物材料について第28規則に関し認められなくなった場合,又は最初の寄託がなされた寄託機関が寄託された生物材料に関してその機能を一時的又は永久的に停止した場合においてそのような状態になった日から6月以内に(1)にいう通知を寄託機関から受け取らなかったときには,(1)にいう3月の期間はそのような状態になったことが欧州特許庁公報で発表された日から起算しなければならない。
(4) 如何なる新たな寄託も,新たに寄託された生物材料が最初に寄託された生物材料と同一である旨を証明する寄託者により署名された宣言を伴わなければならない。
(5) 新たな寄託が,1977年4月28日の特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するプダペスト条約に基づいてなされた場合にはプダペスト条約の規定が適用される。
 
第29規則 クレームの形式及び内容
(1) クレームは保護が求められる事項を発明の技術的特徴をもって明示しなければならない。適当と認められる場合には,クレームは次の事項を含まなければならない。
(a)
発明の対象の表示と保護が求められている発明の対象の明示に必要な発明の技術的特徴であって結合して先行技術をなすものを表示する記述
(b)
「を特徴とする」又は「によって特徴付けられる」という表現によって始まり,(a)に記載された技術的特徴と結合して保護が求められている技術的特徴を記載する特徴部分
(2) 第82条に従うことを条件として,欧州特許出願は,出願の対象を考慮したときに出願の対象を単一のクレームで包含することが適当でない場合には同一の範疇(生産物,方法,器具又は用途)に属する2以上の独立したクレームを含むことができる。
(3) 発明の本質的特徴を記載した何れのクレームもその発明の特定の実施態様に関する1又は2以上のクレームを伴なうことができる。
(4) 他のクレームのすべての特徴を含むクレーム(従属クレーム)は,可能なときは冒頭で他のクレームを引用し,次いで保護が求められている追加の特徴を記載しなければならない。従属クレームはそれが直接引用するクレームが従属クレームであったとしても認められなければならない。前の単一のクレームを引用するすべての従属クレーム及び前の複数のクレームを引用するすべての従属クレームは可能な範囲でかつ最も適当な方法で取りまとめて記載しなければならない。
(5) クレームの数はクレームに記載される発明の性質を考慮して妥当な数としなければならない。クレームの数が複数個の場合には,クレームにはアラビア数字により連続番号を付さなければならない。
(6) クレームは,不可欠である場合を除いて,発明の技術的特徴について明細書又は図面を引用する記載によってはならない。特にクレームは「明細書の……の箇所に記載されているように」又は「図面の第何図に示したように」のような引用をする記載によってはならない。
(7) 欧州特許出願が図面を含む場合において,クレームの理解の助けとなる場合には,クレームに記載されている技術的特徴に括弧を付した引用符号を続けることが望ましい。これら引用符号はクレームを限定するものと解してはならない。
 
第30規則 発明の単一性
(1) 一群の発明が1の同一欧州特許出願中でクレームされている場合において,第82条にいう発明の単一性に関する要件は,これら発明間に技術的な関連があり,これら発明が1又はそれ以上の同一の又は対応する特定の技術的特徴を含んでいる場合にのみ満たしているものとされる。全体として発明であると認められるクレームされた各発明の各々が先行技術を越えるのに寄与している部分を有し,「特定の技術的特徴」はこの寄与している部分を形成している技術的特徴を意味する。
(2) 一群の発明が1つの包括的発明概念を形成するように互いに連関しているか否かは,各発明が別個にクレームされているか又は1つのクレームにおいて択一的に表現されているか否かとは関係なく判断される。
 
第31規則 手数料を要するクレーム
(1) 出願時に10以上のクレームを含む欧州特許出願は10を超えた各クレームについてクレーム手数料の納付を必要とする。クレーム手数料は出願後1月以内に納付しなければならない。クレーム手数料が納付期限までに納付されなかった場合には,納付期限を遵守しなかった旨の通知による1月の猶予期間内に有効に納付することができる。
(2) (1)に規定する期間内にクレーム手数料が納付されなかった場合には関係するクレームは放棄されたものとみなされる。適式に納付されたすべてのクレーム手数料は第77条(5)にいう場合にのみ払い戻される。
 
第32規則 図面の形式
(1) 図面を描く用紙については,使用可能な表面積は26.2cm×17cmを超えてはならない。これらの用紙では使用可能な又は使用した表面の周囲に枠を記載してはならない。少くとも次の最小余白をとらなければならない。
上端 2.5cm
右側 1.5cm
左側 2.5cm
下端 1.0cm
(2) 図面は次のとおり作成しなければならない。
(a)
図面は,耐久性のある,黒色の十分に濃厚な,一様な太さの明瞭な線で着色することなく作成しなければならない。
(b)
断面は斜線によって示さなければならず,この場合において斜線によって引用符号及び引出線の明瞭な読取が妨げられてはならない。
(c)
図の大きさ及び作図の明瞭性は3分の2に縮尺して電子的に又は写真複製をした場合にすべての細部を容易に識別することができるようなものとしなければならない。例外として図面の尺度を示す場合には,尺度は図式で表示しなければならない。
(d)
図面に記載するすべての数字,文字及び引用符号は簡潔かつ明瞭でなければならない。括弧,円又は引用符を,数字及び文字と共に用いてはならない。
(e)
図面中のすべての線は通常製図用具を用いて描かなければならない。
(f)
同一図中の各要素は,異なる比率が図の明瞭性に不可欠な場合を除くほか互いに同じ比率で描かなければならない。
(g)
数字及び文字の大きさは,0.32cm以上としなければならない。図面中の文字は,ローマ字及び,慣習となっている場合には,ギリシャ文字を用いる。
(h)
図面の同一の用紙には2以上の図を含むことができる。2若しくはそれ以上の用紙に描く図でもって1つの全体図を形成しようとする場合には,複数の用紙に描く図は,何れの図の何れの部分をも隠すことなく全体図が組立てられることができるように配置しなければならない。個々の図は,不必要な間隔を置くことなく,望ましくは縦長の状態で互いに明瞭に分かれるように配置しなければならない。図を縦長の状態で配置することができない場合には,図の上端を用紙の左側に位置させて横長の状態で描かなければならない。個々の図には,用紙の番号とは関係なく,アラビア数字により連続番号を付する。
(i)
明細書及びクレームに用いない引用符号は図面に用いず,図面に用いない引用符号は明細書及びクレームに用いない。同一の特徴は,引用符号を用いて示す場合は,当該出願の全体を通じて同一の符号によって示す。
(j)
図面には,不可欠な場合における「水」,「蒸気」,「開」,「閉」,「AB断面」等の単語又は語句並びに電気回路,及びブロックダイヤグラム若しくはフローチャートの場合における理解のために不可欠な表示のための短い語句を除くほか,文言を記載してはならない。かかる語は,必要な場合は図面中の何れの線にもかかることなくその翻訳と置き代えることができるように配置する。
(3) フローチャート及びダイヤグラムは,図面とみなされる。
 
第33規則 要約の形式と内容
(1) 要約には,発明の名称を記載する。
(2) 要約は,明細書,クレーム及び図面に含まれている開示の簡潔な概要を含む。概要は,発明の属する技術分野を表示し,かつ技術的課題,発明による技術的課題の解決手段の要点及び発明の主な用途若しくは用途を明瞭に理解することができるような方法で作成する。要約には,該当する場合には,出願に記載されているすべての化学式のうち発明の特徴を最もよく表すものを記載する。要約には,発明の利点若しくは価値の主張又はその発明の思惑的な利用について記載してはならない。
(3) 要約は,150語以内であることが望ましい。
(4) 欧州特許出願が図面を含む場合には,出願人は要約が公開されるときに要約とともに掲載されるべきものとして推奨する1図又は例外的な場合は数個の図を指示しなければならない。欧州特許庁は他の図が発明の特徴をよりよく示していると認める場合には他の図を公開するよう決定することができる。要約に記載されている主要な特徴であって図面に示されているもののそれぞれには,括弧付きの引用符号を付する。
(5) 要約は,特に当該欧州特許出願自体を調べる必要があるか否かを判断することを可能ならしめることにより,特定の技術分野における調査のための効率的な手段となるように作成する。
 
第34規則 禁止された事項
(1) 欧州特許出願には,次のものを記載してはならない。
(a)
「公の秩序」又は善良の風俗に反する記述又は他の事項
(b)
出願人以外の特定の者の生産物,方法又は出願若しくは特許の利点若しくは有効性を誹謗する記述。先行技術との単なる比較は,それ自体では,誹謗とはみなさない。
(c)
状況からみて明らかに関連性のない又は不必要な記述又は他の事項
(2) 欧州特許出願が(1)(a)にいう禁止された事項を含む場合には,欧州特許庁は,出願を公開するときにそれを省略しなければならない。この場合,省略した語又は図面の箇所及び数を表示しなければならない。
(3) 欧州特許出願が(1)(b)にいう記述を含む場合には,欧州特許庁は,出願を公開するとき,その記述を省略することができる。欧州特許庁は,省略した語の箇所及び数を表示しなければならず,請求があったときには,省略箇所の写しを交付しなければならない。
 
第35規則 出願書類の提出を規制する一般的規定
(1) 第14条(2)に規定する翻訳文は,「欧州特許出願を構成する書類」という用語の中に含まれるものとみなされる。
(2) 欧州特許出願を構成する書類は,3通提出されなければならない。ただし,欧州特許庁長官は,3通よりも少ない部数で書類が提出されることを決定することができる。
(3) 欧州特許出願を構成する書類は,特にスキャニング,写真,静電的方法,写真オフセット及びマイクロフィルムによって,電子的に及び直接に無限の部数の複製をすることができるように作成する。用紙には,裂目,しわ及び折目があってはならない。用紙は,片面のみを用いる。
(4) 欧州特許出願を構成する書類は,可撓性のある,丈夫な,白色の,滑らかな,光沢のない,かつ,耐久性のあるA4判(29.7p×21p)の紙を用いて作成する。第32規則(2)(h)及び本規則(11)の規定を条件として,各用紙はその短辺を上下として(縦長にして)用いなければならない。
(5) 欧州特許出願を構成する書類(願書,明細書,クレーム,図面及び要約)の各々は,新たな用紙から開始させなければならない。用紙は,容易にめくることができ,分離し,及び綴じ直すことができるような方法で綴じられていなければならない。
(6) 第32規則(1)の規定を条件として,少くとも次の最小余白をとらなければならない。
上端 2p
左側 2.5p
右側 2p
下端 2p
上記の余白については,次の数値を超えないことが望ましい。
上端 4p
左側 4p
右側 3p
下端 3p
(7) 欧州特許出願を構成する書類の余白は,その提出の際は,完全な空白としておかなければならない。
(8) 欧州特許出願のすべての用紙には,アラビア数字により連続番号を付する。これらの番号は,上端余白ではなくて用紙の上端の中央に付する。
(9) 明細書及びクレームの各用紙には,5行目ごとに番号を付することが望ましく,これらの番号は,用紙の左側の余白の右側に付することが望ましい。
(10) 欧州特許の付与を申し立てる願書,明細書,クレーム及び要約は,タイプ印書又は印刷による。グラフィック記号及び符号,並びに化学式又は数式に限り,必要なときは,手書によることができる。タイプ印書による場合には,行の間隔は,1.5文字の幅とする。すべての記載事項は,大文字の大きさが縦0.21p以上の文字及び,暗色の退色性のない色で記載する。
(11) 欧州特許の付与を申し立てる願書,明細書,クレーム及び要約には,図を記載してはならない。明細書,クレーム及び要約には,化学式又は数式を記載することができる。明細書及び要約には,表を使用することができる。クレームには,表を使用することが望ましい事項についてのみ,表を使用することができる。表及び化学式又は数式は,縦長にして用いられる用紙に十分に配置することができない場合には,用紙を横にして配置することができる。表又は化学式若しくは数式が横方向に配置される用紙は,表又は式の上端が用紙の左側になるようにして提示する。
(12) 物理量は,国際慣行において承認されている単位で,適当である場合は,SI単位を用いたメートル法で記載する。この要件を満たさない如何なるデータも,国際慣行において承認されている単位によるものを併記しなければならない。数式については,一般に用いられている記号を用いる。化学式については,一般に用いられている記号,原子量及び分子式を用いる。通常,当該技術分野において一般に採用されている技術用語,符号及び記号を用いる。 (13) 用語及び記号は,当該欧州特許出願の全体を通じて一貫して,使用する。 (14) 各用紙においては,妥当な範囲を超えて消してはならず,また,訂正,重ね書き及び行間挿入を行ってはならない。内容が真正であることに疑いがなく,かつ,良好な複製のための要件が損なわれないことを条件として,第1文の規定に従わないことを認めることができる。
 
第36規則 後に提出する書類
(1) 第27規則第29規則及び第32規則から第35規則までの規定は,欧州特許出願を構成する書類を差し替える書類について適用する。第35規則(2)から(14)までの規定は,第51規則(6)に規定するクレームの翻訳文についても適用する。
(2) (1)の第1文に規定する書類以外のすべての書類は,通常,タイプ印書又は印刷による。この場合,各頁の左端に約2.5cmの余白をとる。
(3) 欧州特許出願の出願後に提出される付属書類以外のすべての書類には,署名しなければならない。書類に署名がなされていなかった場合は,欧州特許庁は,関係する当事者に欧州特許庁によって定められる期間内に署名することを求める。期間内に署名された場合は,その書類は,元の受理日付を維持する。期間内に署名されなかった場合は,書類は,受理されなかったものとみなす。
(4) 他の者に送付しなければならない書類又は2以上の欧州特許出願若しくは欧州特許に関する書類は,十分な数の写しを提出しなければならない。欧州特許庁が請求したにも拘らず関係する当事者がこの義務を履行しない場合は,不足する写しは,関係する当事者の費用で作成する。
(5) (2)から(4)までの規定に拘らず,欧州特許庁長官は,欧州特許出願の出願後に提出される書類を他の通信手段を用いて欧州特許庁に提出することを許容することができ,その通信手段の使用を規制する条件を定めることができる。欧州特許庁長官は,特に,長官が定める期間内に,提出された書類の内容を再現し,かつ施行規則の要件を満たした確認文書を提出することを要求することができる。かかる確認文書が期間内に提出されなかった場合は,書類は,受理されなかったものとみなす。
 
第III章 更新手数料
第37規則 更新手数料の支払
(1) 次年度についての欧州特許出願の更新手数料は,欧州特許出願の出願日に対応する日を含む月の最後の日に支払うものとする。更新手数料は,その支払期限の1年以上前に有効に支払うことができない。
(2) 追加手数料が第86条(2)で定められた期間内に支払われた場合は,当該規定に定義する意味において追加手数料が更新手数料と同時に支払われたものとみなす。
(3) 欧州分割出願の出願日までに先の出願についての更新手数料の支払期限が到来している場合は,分割出願についても更新手数料を支払わなければならず,分割出願時が支払期限となる。分割出願の提出から4月以内が支払期限となる手数料及び更新手数料はこの支払期限内であれば,追加手数料なしで支払うことができる。更新手数料は,期限内に支払わなかったとしても支払期限から6月以内であれば,有効に支払うことができる。ただし,第86条(2)の規定に基づく追加手数料を同時に支払うことを条件とする。
(4) 第61条(1)(b)の規定により提出された新たな欧州特許出願については,それが実際に提出された年及びその前年については,更新手数料を支払うことを必要としない。
 
第IV章 優先権
第38規則 優先権の申立及び優先権書類
(1) 第88条(1)に規定する優先権申立には,先の出願の日付及びその先の出願が為された国を記載し,かつ,出願番号を記載する。
(2) 先の出願の日付及び国は,欧州特許出願の提出の際に申し立てなければならない。出願番号は,優先権主張日の後16月が満了する前に明示する。
(3) 先の出願の写しは,優先権主張日の後16月が満了する前に提出しなければならない。この写しは先の出願を受理した当局によって先の出願の正確な写しであるとして認証されていなければならず,かつ,当該当局によって交付された先の出願日を記載した証明書を添付しなければならない。
(4) 欧州特許庁において入手可能な先の出願の写しが欧州特許庁長官により定められた条件の下で欧州特許出願のファイルに挿入されることとなっている場合には,その先の出願の写しは,正規に提出されたものとみなす。
(5) 第88条(1)で要求された翻訳文は,欧州特許庁により指定された期限内であって,最も遅い場合でも第51規則(6)で規定された期間内に提出する。ただし,当該欧州特許出願が先の出願の完全な翻訳である旨の宣誓書を提出することで,これに代えることができる。(4)の規定を準用する。
(6) 優先権申立に記載された事項は,公開された欧州特許出願及び欧州特許明細書に記載する。
 
第38a規則 優先権書類の発行
  請求により,欧州特許庁は,出願人に対して欧州特許出願(優先権書類)の認証した写を発行する。欧州特許庁長官は,優先権書類の書式及び支払うべき手数料の詳細を含むすべての必要な取決めを決定する。
 
第IV部 条約第IV部施行規則
 
第I章 受理課による審査
第39規則 出願審査に続く通知
  欧州特許出願が第80条に定める要件を満たしていない場合は,受理課は,明らかになった欠陥を出願人に通知し,出願人が明らかになった欠陥を1月以内に補充しない場合は,その出願は欧州特許出願として扱われないことを通知する。出願人が補充をした場合は,出願人に出願日を通知する。
 
第40規則 様式上の要件の審査
  第91条(1)(b)の規定により欧州特許出願が満たさなければならない様式上の要件は,第27a規則(1)から(3)まで,第32規則(1)及び(2),第35規則(2)から(11)まで及び(14),並びに第36規則(2)及び(4)に規定するものとする。
 
第41規則 出願書類の欠陥の補充
(1) 第91条(1)(a)から(d)までに規定する審査によって欧州特許出願における欠陥が明らかになった場合は,受理課は,出願人にその旨を通知し,その欠陥を受理課が定める期間内に補充するよう出願人に求める。明細書,クレーム及び図面は,受理課の意見に従って明らかにされた欠陥を補充するのに十分な範囲内においてのみ補正することができる。
(2) (1)の規定は,出願人が優先権を主張する一方で欧州特許出願を出願する際に最初の出願の出願日又は国を表示しなかった場合は,適用しない。
(3) (1)の規定は,審査によって欧州特許出願の提出のときに示された最初の出願の出願日が欧州特許出願の出願日よりも1年以上前であることが明らかになった場合は,(1)は適用しない。この場合は,出願人が1月以内に欧州特許出願の出願日の前の1年以内である訂正された日付を示さない限り,受理課は,出願人に出願について優先権が認められない旨を通知する。
 
第42規則 発明者の後の特定
(1) 第91条(1)(f)に規定する審査によって第17規則の規定に従って発明者を特定し得なかったことが明らかになった場合は,受理課は,出願人に対し,この欠陥が第91条(5)に規定する期間内に補充されない限り,欧州特許出願は取り下げられたものとみなす旨を通知する。
(2) 欧州分割出願又は第61条(1)(b)の規定により提出された新たな欧州特許出願の場合は,発明者を特定するための期間は,如何なる場合にも,期間を表示する(1)の通知の後2月経過するまでに満了することはない。
 
第43規則 後に提出された又は脱落している図面
(1) 第91条(1)(g)に規定する審査によって欧州特許出願の出願日よりも後に図面が提出されたことが明らかになった場合は,受理課は,出願人に対し,出願人が1月以内に図面が提出された日を出願日とすることを請求しない限り,欧州特許出願における図面及びその図面への言及は削除されたものとみなす旨を通知する。
(2) 審査によって図面が提出されていなかったことが明らかになった場合は,受理課は,出願人に対し図面を1月以内に提出するよう求め,かつ,出願は図面が提出された日を出願日とするか又は,図面が提出期間までに提出されなかった場合は,欧州特許出願における図面への言及は削除されたものとみなす旨を出願人に通知する。
(3) 出願人には,新たな出願日が通知される。
 
第II章 欧州調査報告
第44規則 欧州調査報告の内容
(1) 欧州調査報告には,調査報告を作成する際に欧州特許庁が入手可能であり,かつ,欧州特許出願に係わる発明が新規性を有するものか否か及び進歩性を有するものか否かを決定するに当たって考慮することができる文献を記載する。
(2) 何れの引用も,その関連するクレームに言及する。必要な場合は,引用された文献の関連部分を(例えば頁,欄及び行又は図表を表示することによって)特定する。
(3) 欧州調査報告では,主張されている優先権主張日の前に公表された引用文献,優先権主張日と出願日の間に公表された引用文献と,及び出願日以後に公表された引用文献を互いに区別する。
(4) 欧州特許出願の出願日の前に生じた口頭による開示,使用又はその他の手段による開示に関連する文献があれば,その公表の日付の表示及び文書によらない開示の日付の表示と共に欧州調査報告に記載する。
(5) 欧州調査報告は,手続語で作成する。
(6) 欧州調査報告には,国際分類に従って,欧州特許出願の対象の属する分類を表示する。
 
第45規則 不完全調査
  調査部は,欧州特許出願がすべての又は一部のクレームに基いて技術水準についての有意義な調査を行うことができる程度にまで条約の規定を満たしていないと認めた場合は,調査が不可能である旨の宣言をするか又は,実行可能である限り,部分的な欧州調査報告を作成する。この宣言及び部分的な欧州調査報告は,後の手続において欧州調査報告として考慮される。
 
第46規則 発明が単一性を欠く場合の欧州調査報告
(1) 調査部は,欧州特許出願が発明の単一性の要件を満たしていないと認める場合は,クレームに最初に記載された発明又は第82条に定義する意味における群の発明に係わる欧州特許出願の部分についての部分的な欧州調査報告を作成する。調査部は,出願人に対し,欧州調査報告に他の発明をも含ませる場合は,2週間以上6週間以内の調査部により定められた期間内に,関係する各発明について更に調査手数料を支払わなければならない旨を通知する。調査部は,調査手数料が支払われた発明に係わる欧州特許出願の部分について欧州調査報告を作成する。
(2) (1)に基づき支払われたすべての手数料は,審査部による欧州特許出願の審査の間に出願人が払戻を請求し,かつ,審査部が(1)の通知は正当でないと認めた場合は,払い戻される。
 
第47規則 要約の確定内容
(1) 欧州調査報告の作成と同時に,調査部は,要約の確定した内容を決定する。
(2) 要約の確定した内容は,欧州調査報告と共に出願人に送付される。
 
第III章 欧州特許出願の公開
第48規則 公開のための技術的準備
(1) 欧州特許庁長官は,欧州特許出願の公開のための技術的準備がいつ完了したとみなされるべきかについて決定する。
(2) 欧州特許出願は,公開のための技術的準備の完了前に出願の拒絶が確定し,又は取り下げられ,若しくは取り下げられたものとみなされた場合は,公開しない。
 
第49規則 欧州特許出願及び欧州調査報告の公開の形式
(1) 欧州特許庁長官は,欧州特許出願の公開の形式及びそれに含まれるべき情報について規定する。欧州調査報告及び要約が別個に公開される場合も,同様とする。欧州特許庁長官は,要約の公開について特別の条件を定めることができる。
(2) 指定された締約国は,公開された欧州特許出願に明示される。
(3) 欧州特許出願の公開のための技術的準備の完了前にクレームが第86規則(2)の規定により補正された場合は,新たな又は補正されたクレームは,元のクレームに加えて,公開に含まれる。
 
第50規則 公開についての情報
(1) 欧州特許庁は,出願人に対し,欧州特許公報が欧州調査報告の公開に言及する日を通知し,かつ,この通知において第94条(2)及び(3)の規定について出願人の注意を喚起する。
(2) 出願人は,(1)に規定する通知がなかったことを問題にすることができない。公開への言及の日よりも後の日が通知に明示されていた場合は,その誤りが明白なものである場合を除き,その後の日を審査請求を提出するための期間の起算日とする。
 
第IV章 審査部による審査
第51規則 審査手続
(1) 第96条(1)の規定による求めにおいて,欧州特許庁は,出願人に対し,出願人が希望する場合は,欧州調査報告について意見を述べ,かつ,適当な場合は,明細書,クレーム及び図面を補正するよう求める。
(2) 第96条(2)の規定による如何なる求めにおいても,審査部は,出願人に対し,適当な場合は,明らかとなった欠陥を訂正し又は必要な場合は,補正された形で明細書,クレーム及び図面を提出するよう求める。
(3) 第96条(2)の規定による通知には,理由を付さなければならず,適当な場合は,欧州特許を付与し得ないすべての理由を付する。
(4) 審査部は,欧州特許の付与を決定する前に,出願人に対し,審査部がその内容でもって特許を付与しようとする本文を通知し,審査部が定める2月以上4月以内の期間内に,通知した本文の承認を出願人が表明するよう請求する。当該期間は,その満了前に出願人の請求があった場合は,1回に限り最長2月延長することができる。
(5) (4)に基づく期間内に出願人が本文の承認を表明しない場合は,欧州特許出願は拒絶される。当該期間内に出願人が特許のクレーム,明細書及び図面の補正を提案し,審査部が第86規則(3)に従いこの補正に同意しない場合は,審査部は,決定をする前に,出願人に対し,指定した期間内に意見書を提出するよう請求し,かつ,その理由を示す。
(6) 提案された補正案(第86規則(3))を考慮して審査部が欧州特許を付与しようとする本文に対して出願人が承認した場合は,審査部は,審査部により指定された2月以上3月以内の延長不可期間内に特許付与及び印刷手数料を支払うよう出願人に求め,かつ,更に当該期間内に手続語以外の欧州特許庁の2つの公用語による特許のクレームの翻訳文を提出するよう出願人に求める。
(7) 審査部が欧州特許を付与しようとする欧州特許出願の本文中に10を超えるクレームが含まれる場合は,審査部は,出願人に対し,(6)に規定する期間内に各追加のクレームに対してクレーム手数料を支払うことを求める。ただし,当該手数料が第31規則(1)の規定に従い既に支払われていた場合は,この限りでない。
(8) 特許付与のための手数料,印刷手数料又はクレーム手数料が期間内に支払われなかった場合,又は翻訳文が期間内に提出されなかった場合は,欧州特許出願は,取り下げられたものとみなす。 (8a) (6)に規定する求めが通知された後に指定手数料の支払期限が到来する場合は,指定手数料が支払われるまで欧州特許付与の公示はなされない。出願人にはその旨が通知される。
(9) (6)に規定する求めが通知された後であって欧州特許付与が次に公示される可能性のある日前に更新手数料の支払期限が到来する場合は,更新手数料が支払われるまで欧州特許付与の公示はなされない。出願人にはその旨が通知される。
(10) (6)に規定する審査部の通知には,第65条(1)の規定による翻訳文を要求する指定締約国を明示する。 (11) 欧州特許付与の決定には,欧州特許出願の何れの本文が欧州特許付与の基礎となるかについて明示する。
 
第52規則 異なる出願人に対する欧州特許の付与
  異なる締約国について異なる者が出願人として欧州特許登録簿に登録されている場合は,審査部は,その締約国について登録された1又は2以上の出願人にそれぞれの締約国についての欧州特許を付与する。
 
第V章 欧州特許明細書
第53規則 欧州特許の公表のための技術的準備及び明細書の形式
  第48規則第49規則(1)及び(2)の規定は,欧州特許明細書に準用する。特許明細書には欧州特許に対する異議申立をすることができる期間の表示も含む。
 
第54規則 欧州特許証
(1) 欧州特許庁は,欧州特許明細書が公表されたときは速やかに,特許権者に対して,明細書を添付した欧州特許証を発行する。特許証は,特許明細書に記載された発明に関して,特許証に記載された者に対し,明細書に指定された締約国について特許が付与されたことを証明する。
(2) 特許権者は,取扱手数料を支払って,欧州特許証の写しの交付を請求することができる。
 
第V部 条約第V部施行規則
 
第55規則 異議申立書の内容
  異議申立書は,次のものを含むものとする。
(a)
 第26規則(2)(c)の規定に従い異議申立人の氏名及び宛先並びにその者の住所又は営業の本拠地が所在する国
(b)
 異議申立の対象となる欧州特許の番号,特許権者の氏名及び発明の名称
(c)
 欧州特許の異議を申し立てた範囲及び異議申立の根拠となる理由を示した陳述書,並びにこの理由を裏付けるために提出される事実,証拠及び主張の表示
(d)
 異議申立人が代理人を選任した場合は,第26規則(2)(c)の規定に従い代理人の氏名及び事務所の宛先
 
第56規則 不適法な異議申立書の却下
(1) 異議部は,異議申立書が第99条(1),第1規則(1)及び第55規則(c)の規定を満たしていないか,又は異議が申し立てられた特許が十分に特定されていないと認めた場合は,これらの不備が異議申立期間の満了前に補充された場合を除き,異議申立書を不適法なものとして却下する。
(2) 異議部は,異議申立書が(1)に掲げる規定以外の規定を満たしていないと認める場合は,当該事項を異議申立人に通知し,かつ,不備を異議部が指定する期間内に補充するよう異議申立人に求める。異議申立書が当該期間内に補充されなかった場合は,異議部は,異議申立書を不適法なものとして却下する。
(3) 異議申立書を不適法なものとして却下した決定は,異議申立書の写しと共に特許権者に送付する。
 
第57規則 異議申立の審査の準備
(1) 異議部は,異議申立を特許権者に通知し,かつ,特許権者に答弁書を提出し及び,適当な場合は,異議部によって指定された期間内に明細書,クレーム及び図面について補正書を提出するよう求める。
(2) 数件の異議申立がなされた場合は,異議部は,(1)に基づいて定められた通知と同時に,これらの異議申立を他の異議申立人に通知する。
(3) 特許権者が提出した答弁書及び如何なる補正書も,他の当事者に送達するものとし,異議部は,必要と認める場合は,その当事者に対し,異議部が指定した期間内に応答するよう求める。
(4) 異議手続において参加申立があった場合は,異議部は,(1)から(3)までの規定の適用を免除することができる。
 
第57a規則 欧州特許の補正
  第100条に規定する異議事由に基づき補正をする場合は,たとえ各事由が異議申立人により申し立てられていなかったとしても,第87規則の規定を侵すことなく,明細書,クレーム及び図面は,補正することができる。
 
第58規則 異議の審査
(1) 第101条(2)の規定により発出されるすべての通知及びそれに対する応答は,すべての当事者に通知する。
(2) 第101条(2)の規定による欧州特許権者への如何なる通知においても,特許権者は,適当な場合,必要があれば,明細書,クレーム及び図面を補正した形で提出するよう求められる。
(3) 必要な場合は,第101条(2)の規定による欧州特許権者への如何なる通知にも,理由を付した説明を表示する。適当な場合は,この説明には欧州特許を維持することができないすべての根拠を含める。
(4) 異議部は,補正された形で欧州特許の維持を決定する前に,当事者に対し,異議部は補正された特許を維持する意図のあることを通知し,補正された形で特許を維持しようとする本文を当事者が承認しない場合は,2月以内に意見を申し立てるよう求める。
(5) 異議部により通知された本文に対して不承認が表明された場合は,異議申立の審査を継続することができる。それ以外の場合は,異議部は,(4)に規定する期間が満了したときに,特許権者に対して,欧州特許の新たな明細書の印刷のための手数料を3月以内に支払い,かつ,補正されたクレームの手続語以外の欧州特許庁の2つの公用語による翻訳文を提出するよう請求する。
(6) (5)の規定に基づき請求された手続行為が所定の期間内に行われなかった場合においても,当該期間を遵守していないことを指摘する旨の通知の送達後2月以内に当該手続を行なうことができる。ただし,当該2月以内に欧州特許の新たな明細書を印刷するための手数料の2倍に相当する割増料金を支払うことを条件とする。
(7) (5)の規定に基づく異議部の通知には,第65条(1)に規定する翻訳文を要求する指定締約国を明示する。
(8) 補正された形で欧州特許を維持する旨の決定には,欧州特許のどの本文が当該特許を維持する基礎となるかを記載する。
 
第59規則 文献の請求
  異議申立手続の当事者が言及している文献は,異議申立書又は書面と共に2部提出する。かかる文献が同封されていないか,又は欧州特許庁の求めに基づく期限までに提出されなかった場合は,この文献に基づく如何なる論拠も考慮しない旨の決定をすることができる。
 
第60規則 欧州特許庁の職権による異議申立手続の続行
(1) 欧州特許がすべての指定締約国について放棄され又は消滅した場合は,欧州特許庁による放棄又は消滅の通知から2月以内に異議申立人の請求により異議申立手続を続行することができる。
(2) 異議申立人が死亡し又は法的無能力となった場合は,相続人又は法定代理人の参加がなくても,欧州特許庁は,職権により異議申立手続を続行することができる。異議申立が取り下げられた場合についても,同様とする。
 
第61規則 欧州特許の移転
  第20規則の規定は,異議申立期間中に又は異議申立手続中にされた欧州特許の移転に準用する。
 
第61a規則 異議申立手続における書類
  施行規則第III部第II章の規定は,異議申立手続において提出される書類に準用する。
 
第62規則 異議申立手続における欧州特許の新たな明細書の形式
  第49規則(1)及び(2)の規定は,欧州特許の新たな明細書に準用する。
 
第62a規則 新たな欧州特許証
  第54規則の規定は,新たな欧州特許明細書に準用する。
 
第63規則 費用
(1) 費用の分担は,異議申立の決定において扱う。この分担は,関係する権利の適正な保護を保障するために必要な費用のみを考慮する。この費用には,当事者の代理人の報酬を含める。
(2) 費用請求書は,裏付けとなる証拠と共に費用の確定請求書に添付する。この費用の確定請求書は,費用の確定を求める決定が確定した場合にのみ認められる。費用は,その信頼性が確証されれば確定することができる。
(3) 登録課による費用の裁定について異議部が下すその理由を記載した決定を求める請求は,費用の裁定の通知の日の後1月以内に書面によって欧州特許庁に提出しなければならない。この決定の請求は,費用の裁定についての手数料の支払があるまでは提出されたものとみなさない。
(4) 異議部は,(3)の請求により口頭審理を経ないで決定する。
 
第VI部 条約第VI部施行規則
 
第64規則 審判請求書の内容
  審判請求書には,次の事項を記載する。
(a)
 第26規則(2)(c)の規定による審判請求人の氏名及び宛先
(b)
 審判請求の対象となる決定を特定する申立及び決定の変更又は取消を請求する範囲
 
第65規則 不適法な審判請求の却下
(1) 審判請求が第106条から第108条まで,第1規則(1)及び第64規則(b)の規定を満たしていない場合は,審判部は,審判請求を不適法なものとして却下する。ただし,各瑕疵が第108条に規定する期間内に補正された場合は,この限りでない。
(2) 審判部は,審判請求が第64規則(a)の規定を満たしていないと認めた場合は,その旨を審判請求人に通知し,審判部が指定する期間内に瑕疵を補正するよう請求人に求める。審判請求が期間内に補正されない場合は,審判部は,審判請求を不適法なものとして却下する。
 
第66規則 審判請求の審理
(1) 別段の規定のない限り,審判請求の対象となった決定を行った部課における手続に関する規定は,審判手続に準用する。
(2) 審決は審判長及び審判部記録課の権限ある職員が署名又は他の適切な手段によって認証する。審決には,次の事項を記載する。
(a)
審決が審判部によってなされたものである旨の記述
(b)
審決のなされた日付
(c)
審決に加わった審判長及び他の審判官の氏名
(d)
当事者及びその代理人の氏名
(e)
審決のなされた争点に関する記述
(f)
事実の概要
(g)
理由
(h)
場合によっては,費用の決定を含む審判部の命令
 
第67規則 審判請求手数料の払戻
  中間変更の場合又は審判部が審判請求を認容すべきものと認める場合であって,その審判請求手数料の払戻が重要な手続上の瑕疵により衡平であるときは,当該手数料の払戻が命じられる。中間変更の場合は,払戻は,その決定に対して審判が請求されている部課によって,又,その他の場合は,審判部によって,命じられる。
 
第VII部 条約第VII部施行規則
 
第I章 欧州特許庁の決定及び通知
第68規則 決定の形式
(1) 欧州特許庁において口頭審理が開かれた場合は,決定は,口頭で言渡すことができる。当該決定は,その後当事者に書面で通知する。
(2) 審判請求をすることができる欧州特許庁の決定には理由を付し,かつ,審判請求をし得る旨の書面による通知を添付する。この通知は,第106条から第108条までに定める規定について当事者の注意も喚起し,これらの条文を添付する。当事者は,通知が添付されていないことを問題にすることができない。
 
第69規則 権利の喪失の認定
(1) 欧州特許庁は,欧州特許出願の拒絶,欧州特許の付与,取消若しくは維持に関する何らの決定又は証拠調べなしに,条約の規定に基づいて権利の喪失がもたらされると認めた場合は,その旨を関係する者に第119条の規定に従って通知する。
(2) 関係する者は,欧州特許庁の認定が不当であると判断した場合は,その者は(1)に規定する通知の後2月以内に当該事項に関する欧州特許庁の決定を請求することができる。その決定は,欧州特許庁が決定を請求する者の意見に同意しない場合にのみ,下される。その他の場合には,欧州特許庁は,決定を請求した者に通知する。
 
第70規則 署名,氏名,印
(1) 欧州特許庁の決定及び通知には,責任を有する職員が署名し,かつ,その氏名を記載する。
(2) (1)にいう書類が電子計算機を用いて責任を有する職員により作成された場合は,署名に代えて印を用いることができる。その書類が電子計算機を用いて自動的に作成される場合は,職員の氏名を省略することもできる。前もって印刷される通知書類についても同様とする。
 
第II章 口頭審理及び証拠調べ
第71規則 口頭審理への召喚
(1) 当事者は,第116条に規定する口頭審理に召喚され,本規則(2)について当事者の注意が喚起される。当事者がより短い期間に同意する場合を除き,召喚については少なくとも2月の猶予をもって通知する。
(2) 欧州特許庁の口頭審理に適法に召喚された当事者が出頭しない場合は,その者がいない状態で,手続を続行することができる。
 
第71a規則 口頭審理の準備
(1) 召喚状を発出する場合は,欧州特許庁は,その見解中で,なすべき決定のために議論する必要のある点について注意を喚起する。同時に,口頭審理の準備として書面による提出物を作成するための最終日を定める。第84規則の規定は適用しない。最終日の後に提示された新たな事実及び証拠については,手続の対象が変更になったという理由で認められた場合以外は,考慮する必要がない。
(2) 特許出願人又は特許権者は,特許の付与又は維持ができない理由について通知を受けた場合は,条約の要件を満たした書類を(1)の第2文に規定する日までに提出するよう求められる場合がある。この場合は,(1)の第3文及び第4文の規定を準用する。
 
第72規則 欧州特許庁による証拠調べ
(1) 欧州特許庁は,当事者,証人若しくは鑑定人の尋問又は検証が必要であると認めた場合は,その旨を決定し,欧州特許庁が実施しようとする調査,立証されるべき関係事実,並びに調査の日付,時間及び場所を示す。証人及び鑑定人の尋問が当事者から請求された場合は,欧州特許庁の決定により,請求をした当事者が審理を希望する証人及び鑑定人の氏名及び宛先を欧州特許庁に明らかにしなければならない期間を定める。
(2) 証拠を提出するための当事者,証人又は鑑定人に対して発出する召喚の通知は,これらの者がより短い期間に同意する場合を除き,少なくとも2月の猶予をもってなされなければならない。召喚状には,次の事項を記載する。
(a)
命じられた調査の日付,時間及び場所を示し,かつ,当事者,証人及び鑑定人の何れが審理を受けることになるかに関する事実を記載した(1)にいう決定の抜粋
(b)
手続の当事者の氏名,及び証人又は鑑定人が第74規則(2)から(4)までの規定に基づき主張し得る権利の詳細
(c)
当事者,証人又は鑑定人がその者の住所のある国の管轄裁判所において審理を受けることを請求し得る旨の表示及びその者が欧州特許庁に出頭できるか否かを欧州特許庁の指定する期間内に欧州特許庁に通知しなければならない旨の要請
(3) 当事者,証人又は鑑定人は,審理を受ける前に,欧州特許庁がその者の住所のある国の管轄裁判所にその者の証拠を宣誓又は同様な拘束力のある形で再審理するよう請求することができる旨の通知を受ける。
(4) 当事者は,調査に立会い,かつ,証言をする当事者,証人及び鑑定人に関連のある質問をすることができる。
 
第73規則 鑑定人への委託
(1) 欧州特許庁は,任命した鑑定人によって作成される報告書が如何なる形式で提出されるかについて決定する。
(2) 鑑定人への委託事項には,次のものを含む。
(a)
鑑定人の任務の正確な記述
(b)
鑑定書を提出するための期間
(c)
手続の当事者の氏名
(d)
鑑定人が第74規則(2)から(4)までの規定に従って主張することができる権利の詳細
(3) 書面によるすべての報告の写しは,当事者に提出される。
(4) 当事者は,鑑定人を忌避することができる。欧州特許庁の関係部課は,この忌避に対して決定を下す。
 
第74規則 証拠調べの費用
(1) 欧州特許庁による証拠調べについては,費用を概算して定めた金額を証拠調べを請求した当事者が欧州特許庁に供託することを条件とすることができる。
(2) 欧州特許庁によって召喚され出頭する証人及び鑑定人は,旅費及び日当について適当な払戻を受ける権利を有する。これらの者は,そのような費用の前渡金を受けることができる。第1文の規定は,召喚されることなく欧州特許庁に出頭して証人又は鑑定人として尋問される者に適用する。
(3) (2)に基づき払戻を請求する権利を有する証人は,収入の損失に対する適当な補償を,また,鑑定人は,その仕事に対しての手数料を受ける権利をも有する。これらの支払は,証人及び鑑定人に対し,その任務又は職務を完了した後に行う。
(4) 管理理事会は,(2)及び(3)の規定の実施に関する細目を定める。(2)及び(3)の規定に従い支払うべき金額は,欧州特許庁が支払う。
 
第75規則 証拠保全
(1) 後に証拠調べをすることがより困難又は不可能になると危惧される事情がある場合は,現存する欧州特許出願又は欧州特許に関して欧州特許庁がしなければならないであろう決定に影響を与える虞のある事実について証拠を保全するために,欧州特許庁は,請求により,遅滞なく,口頭による証拠調べをし又は検証をすることができる。処置がとられるべき年月日は,特許出願人又は特許権者に対してその者が出頭し得るように十分な期間をもって通知する。特許出願人又は特許権者は関連する質問をすることができる。
(2) 請求書には,次の事項を記載する。
(a)
 第26規則(2)(c)の規定に従って請求をする者の氏名及び宛先並びにその者の住所又は営業の本拠地が所在する国
(b)
 当該欧州特許出願又は欧州特許の十分な特定
(c)
 証拠調べを行うべき事実の表示
(d)
 証拠調べの方法の詳細
(e)
 後に証拠調べをすることがより困難又は不可能になると危惧される一応の推定を成立させる陳述
(3) 請求書は,証拠保全のための手数料が支払われるまでは提出されたものとみなさない。
(4) 請求に対する決定及びこれに基づく証拠調べについては,確定されるべき事実によって影響を受けることとなる決定をすることが要求されている欧州特許庁の部課が義務を負う。この場合は,欧州特許庁の手続における証拠調べに関する条約の規定を適用する。
 
第76規則 口頭審理及び証拠調べの調書
(1) 口頭審理及び証拠調べの調書には,口頭審理又は証拠調べの主要点,当事者がした関連のある陳述,当事者,証人又は鑑定人の証言及び検証の結果を記載する。
(2) 証人,鑑定人又は当事者の証言の調書は,それらの者がその記述を検討することができるようにそれらの者に対して朗読し又は提出する。この手続が実施されたこと及び証言をした者が調書を承認したことは,調書に記載する。その者の承認が得られなかった場合は,その者による異議を記載する。
(3) 調書は,それを作成した職員及び口頭審理又は証拠調べをした職員が署名又はその他の適切な手段により認証する。
(4) 当事者には,調書の写しを交付する。
 
第III章 送達
第77規則 送達に関する一般規定
(1) 欧州特許庁における手続においては,送達は,送達すべき書類の原本又は欧州特許庁によって認証された若しくは欧州特許庁の印が付された原本の謄本,又は欧州特許庁の印が付されたコンピュータ出力文書によって行う。ただし,当事者から提出される書類の写しには,その認証は要求されない。
(2) 送達は,次の手段で行われなければならない。
(a)
 第78規則による郵便
(b)
 第79規則による欧州特許庁の敷地建物内における交付
(c)
 第80規則による公示
(d)
 欧州特許庁長官により定められ,欧州特許庁長官により使用条件が定められている技術的通信手段
(3) 締約国の中央産業財産官庁を通じて行われる送達は,国内手続において当該当局に適用される規定に従ってされなければならない。
 
第78規則 郵便による送達
(1) 審判請求のための期間を開始させる決定,召喚状及び欧州特許庁長官の決定に基づく他の書類は,配達証明付の書留郵便によって送達する。他のすべての郵便による送達は,書留郵便による。
(2) 配達証明付であるか否かを問わず,送達が書留郵便によってなされた場合は,郵便が受取人に到達しなかったか又はより後の日に到達した場合を除き,書類は,その投函後に続く第10日目の日に受取人に配達されたものとみなす。疑わしい場合において,郵便がその目的地に到達したこと,又は,場合によっては,郵便が受取人に配達された日を確定することは,欧州特許庁が責任を有する。
(3) 配達証明付であるか否かを問わず,書留郵便による送達は,当該郵便物の受領が拒否された場合においても,配達されたものとみなす。
(4) 郵便による送達が(1)から(3)までにより定められていない場合は,送達がされる国の法律を適用する。
 
第79規則 交付送達
  送達は,欧州特許庁の敷地建物内において,受取人に書類を手渡しで交付することができ,受取人は,その交付の時に受領したものと認める。受取人が書類の受領又はその受領の承認を拒否したとしても,送達があったものとみなす。
 
第80規則 公示送達
(1) 受取人の宛先を確定することができない場合,又は欧州特許庁が第78規則(1)による送達を2回行った後でも送達することができなかった場合は,送達は,公示により行う。
(2) 欧州特許庁長官は,如何なる方法によって公示をすべきか,及び,その期間が満了すれば書類が送達されたとみなされる1月の期間の始期を定める。
 
第81規則 代理人に対する送達
(1) 代理人が選任されている場合は,送達は,その代理人にする。
(2) 単一の関係当事者のために数人の代理人が選任されている場合は,送達は,その1人にすれば足りる。
(3) 数人の関係当事者が共通代理人を有する場合は,その共通代理人に1通の書類を送達すれば足りる。
 
第82規則 送達における変則
  書類が受取人に到達した場合において,欧州特許庁がその書類は適法に送達されたことを証明することができないとき,又は書類の送達に関する規定が守られなかったときは,書類は,欧州特許庁が受領した日であると確定した日に送達されたものとみなされる。
 
第IV章 期間
第83規則 期間の計算
(1) 期間は年,月,週又は日をもって定める。
(2) 計算は,当該事象が生じた日の翌日から開始する。事象とは,手続上の処理又は他の期間の満了の何れかである。手続上の処理が送達である場合は,事象は,別段の規定がない限り,送達された書類の受領となる。
(3) 期間が1年又は数年として表現される場合は,期間は,応答する後の年において当該事象が生じた月日と同月同日に満了する。ただし,応答する後の月に応答する日がないときは,その月の末日に満了する。
(4) 期間が1月又は数月として表現される場合は,期間は,応答する後の月において当該事象が生じた日と同日に満了する。ただし,その後の月に応答する日がないときは,その月の末日に満了する。
(5) 期間が1週間又は数週間として表現される場合は,期間は,応答する後の週において当該事象が生じた曜日と同じ曜日に満了する。
 
第84規則 期間の長さ
  条約又は本施行規則が欧州特許庁により期間の決定がされるべきであると規定している場合は,期間は,2月以上4月以下とし,特別の事情がある場合は,期間を6月までとすることができる。特別の事情がある場合は,期間は,その期間の満了前に提出される請求により延長することができる。
 
第84a規則 書類の遅い受理
(1) 欧州特許庁で遅れて受け取った書類は,期間の満了後の3月を超えて受け取った書類を除き,欧州特許庁長官が定める条件に基づく期間の満了前に,承認されている配達機関へ郵送又は配達された場合は,期間内に受け取ったものとみなす。
(2) 第75条(1)(b)又は(2)(b)に基づいて権限ある当局によって処理される場合は,(1)の規定は,条約が規定する期間に準用する。
 
第85規則 期間の延長
(1) 欧州特許庁の受理課が第75条(1)(a)の意味において書類の受領のために開庁していない日,又は(2)以外の理由により欧州特許庁の所在地において通常の郵便物が配達されない日に期間が満了する場合は,期間は,その後の最初の日であって,欧州特許庁が書類の受領のために開庁し,かつ,通常の郵便物が配達される日まで延長される。
(2) 締約国において又はある締約国と欧州特許庁との間における郵便の配達が,全般的に中断している日又はそれに続く混乱のある日に期間が満了する場合は,当該締約国に居住する当事者又は当該締約国に事務所を有する代理人を任命した当事者については,中断又は混乱の期間の終了後の最初の日まで期間が延長される。第1文の規定は,第77条(5)に定める期間に準用する。当該締約国が欧州特許庁の所在する国である場合は,この規定は,すべての当事者に適用する。前記の中断又は混乱の期間については,欧州特許庁長官が発表する。
(3) (1)及び(2)の規定は,第75条(1)(b)又は(2)(b)の規定に従い管轄当局に対してなされた処理について条約に定める期間に準用する。
(4) 特別な事情,たとえば天災又はストライキにより,欧州特許庁の正常業務が中断又は混乱したために欧州特許庁から当事者への期間満了に関する通知が遅延した場合は,当該期間内に完了すべき手続を,遅延した通知の送達から1月以内に,有効なものとしてすることができる。当該中断又は混乱の開始及び終了の日については,欧州特許庁長官が発表する。
 
第85a規則 料金支払の猶予期間
(1) 出願手数料,調査手数料又は指定手数料は,第78条(2),第79条(2),第15規則(2)又は第25規則(2)に規定する期間内に支払われなかった場合においても,期間を遵守していない旨を明示した通知の送達後1月の猶予期間内であれば,有効に支払うことができる。ただし,当該期間内に割増料金が支払われることを条件とする。
(2) (1)の送達がなかった出願人については,指定手数料は(1)に規定する通常の期間の満了後2月の猶予期間内であれば,有効に支払うことができる。ただし,当該期間内に割増料金が支払われることを条件とする。
 
第85b規則 審査請求書の提出の猶予期間
  審査請求書は,第94条(2)に規定する期間内に提出されていなかった場合においても,期間を遵守していない旨を明示した通知の送達後1月の猶予期間内であれば,有効に提出することができる。ただし,当該期間内に割増料金が支払われることを条件とする。
 
第V章 補正及び訂正
第86規則 欧州特許出願の補正
(1) 欧州調査報告を受け取る前に,出願人は,別段の定めがある場合を除き,欧州特許出願の明細書,クレーム又は図面を補正することができない。
(2) 欧州調査報告を受け取った後で,かつ,審査部からの最初の通知を受け取る前に,出願人は,自発的に,明細書,クレーム及び図面を補正することができる。
(3) 審査部からの最初の通知を受け取った後,出願人は,この通知に対する応答と同時に補正書を提出する場合は,自発的に,明細書,クレーム及び図面を1回に限り補正をすることができる。それ以外の補正は,審査部の同意がなければ,することができない。
(4) 補正されたクレームは,当初にクレームされていた発明又は単一の包括的発明概念を形成している一群の発明と関連していない未調査の発明に関するものであってはならない。
 
第87規則 異なる国についての異なるクレーム,明細書及び図面
  欧州特許庁が,1又はいくつかの指定締約国について,先の欧州特許出願の内容が第54条(3)及び(4)にいう技術水準の一部を構成すると認める場合又は第139条(2)の先行権利の存在を通知された場合は,その締約国について,他の指定締約国と異なるクレームを,かつ,欧州特許庁が必要と認める場合は,異なる明細書及び図面を欧州特許出願又は欧州特許に含ませることができる。
 
第88規則 欧州特許庁に提出された書類中の誤りの訂正
  欧州特許庁に提出された書類中の言語上の誤り,写しの誤り及び過誤は,請求により訂正することができる。ただし,その訂正の請求が明細書,クレーム又は図面に関する場合は,訂正は,訂正として提出されるもの以外の如何なることをも意図したものでないことを直ちに認識することができるほど明白なものでなければならない。
 
第89規則 決定における誤りの訂正
  欧州特許庁の決定においては,言語上の誤り,写しの誤り及び明白な過誤のみを訂正することができる。
 
第VI章 手続の中断
第90規則 手続の中断
(1) 欧州特許庁における手続は,次の場合は,中断する。
(a)
欧州特許の出願人若しくは特許権者又は国内法によってかかる者のために行動する権限を与えられた者が死亡し若しくは法的無能力になった場合。前記の事実が第134条に基づいて任命された代理人の授権に影響を与えない場合は,手続は,かかる代理人による請求によってのみ,中断する。
(b)
欧州特許の出願人又は特許権者が,自己の財産に対してとられた処分の結果として,法的な理由により欧州特許庁における手続を続行することを妨げられた場合
(c)
欧州特許の出願人若しくは特許権者の代理人が死亡し又は法的無能力になった場合,又は,その代理人が,自己の財産に対してとられた処分の結果として生じる法的な理由により,欧州特許庁における手続を続行することを妨げられた場合
(2) (1)(a)及び(b)に掲げる場合において,欧州特許庁が欧州特許庁における手続を続行する権限を与えられた者の同一性についての通知を受け取ったときは,欧州特許庁は欧州特許庁により指定された日から手続が再開されることを前記の者及び利害関係を有する第三者に通知する。
(3) (1)(c)の場合において,欧州特許庁が出願人の新たな代理人の任命の届出を受けたとき,又は欧州特許庁が他の当事者に特許権者の新たな代理人の任命の届出があった旨の通知をしたときは,手続は再開される。手続の中断の開始後3月経過しても欧州特許庁に新たな代理人の任命の届出がなされない場合は,欧州特許庁は,出願人又は特許権者に次のことを通知する。
(a)
 第133条(2)が適用される場合において,この通知の送達後2月以内に届出が提出されないときは,欧州特許出願は取り下げられたものとみなされ又は欧州特許が取り消されること,又は
(b)
 第133条(2)が適用されない場合は,特許出願人又は特許権者に対してこの通知が送達された日から手続が再開されること
(4) 審査請求をするための期間と更新手数料支払のための期間を除き,手続の中断の日において特許出願人又は特許権者に関して効力を有していた期間は,手続が再開された日から再び進行する。この日が審査請求書を提出しなければならない期間の終わりから2月以内である場合,審査請求書は,当該日の後の2月の期間の満了までに提出することができる。
 
第VII章 強制徴収手続の権利放棄
第91規則 強制徴収手続の権利放棄
  欧州特許庁長官は,支払うべき金額の強制徴収のための提訴を,徴収すべき金額が微少である場合又は徴収がきわめて不確定である場合は,放棄することができる。
 
第VIII章 公衆に対する情報
第92規則 欧州特許登録簿の登録事項
(1) 欧州特許登録簿には,次の事項を記載する。
(a)
欧州特許出願の番号
(b)
欧州特許出願の出願日
(c)
発明の名称
(d)
欧州特許出願に与えられた分類記号
(e)
指定された締約国
(f)
欧州特許の出願人又は欧州特許権者の氏名,宛先及びその者の住所又は営業の本拠地の所在する国
(g)
発明者が第18規則(1)に基づき発明者としての資格を放棄しない限り,特許出願人又は特許権者によって表示された発明者の氏名及び宛先
(h)
 第134条にいう特許出願人又は特許権者の代理人の氏名及び事務所の宛先。代理人が複数の場合は,最初に記載された代理人のみの氏名及び事務所の宛先を記載し,それに続いて「及びその他の者」と記載する。ただし,第101規則(9)の組合の場合は,組合の名称と宛先のみを記載する。
(i)
優先権情報(先の出願の出願日,国及び出願番号)
(j)
欧州特許出願の分割の場合は,欧州分割出願の番号
(k)
欧州分割出願及び第61条(1)(b)の規定により提出された新たな欧州特許出願の場合は,原欧州特許出願に関しての(a),(b)及び(i)に関する情報
(l)
欧州特許出願の公開日及び,適当な場合は,別途にされた欧州調査報告の公開日
(m)
審査請求書提出の日
(n)
欧州特許出願が拒絶され,取り下げられ又は取り下げられたものとみなされる日
(o)
欧州特許付与の告示の公表の日
(p)
異議申立期間中及び,適当な場合は,異議申立に対する最終決定がなされる前の締約国における欧州特許の消滅の日
(q)
異議申立の日
(r)
異議についての決定の日及び趣旨
(s)
 第13規則の場合における手続の中止と再開の日
(t)
 第90規則の場合における手続の中断と再開の日
(u)
(n)又は(r)について登録されていた場合は,権利の回復の日
(v)
 第135条にいう請求の欧州特許庁への提出
(w)
欧州特許出願又は欧州特許に対する権利及びかかる権利が本施行規則に従い記録されている場合は,これらの権利の移転
(2) 欧州特許庁長官は,(1)に定める事項以外のものを欧州特許登録簿に記載する旨を定めることができる。
(3) 欧州特許登録簿の抜粋は,請求により事務手数料が納付されたときには交付しなければならない。
 
第93規則 閲覧に供されないファイルの部分
  第128条(4)の規定に従い閲覧から除外されるファイルの部分は,次のとおりである。
(a)
審判部又は拡大審判部の構成員の除斥又は忌避に関する書類
(b)
当事者には通知されない決定及び意見の草案,決定及び意見の作成の準備のために用いられたその他のすべての書類
(c)
発明者が第18規則(1)の規定に基づき発明者としての資格を放棄した場合は,発明者の表示
(d)
閲覧しても欧州特許出願若しくはその特許について公衆に知らせることにはならないという理由で欧州特許庁長官が閲覧から除外した他のすべての書類
 
第94規則 ファイルの閲覧のための手続
(1) 欧州特許出願及び欧州特許のファイルの閲覧は,原本若しくはその写し,又はファイルを記憶した技術的記憶手段について行うことができる。
(2) 欧州特許庁長官は,支払うべき手数料の詳細を含むすべての閲覧の取決めを決定する。
 
第95規則 ファイルに含まれる情報の通知
  第128条(1)から(4)まで及び第93規則に規定する制限に従うことを条件として,欧州特許庁は,請求により,管理手数料の支払を条件として,欧州特許出願又は欧州特許のファイルに関する情報を通知することができる。ただし,欧州特許庁は,提供すべき情報の量を考慮して,ファイル自体の閲覧が適当とみなされる場合は,その選択をするよう要求することができる。
 
第95a規則 ファイルの作成,維持及び保管
(1) 欧州特許庁は,欧州特許出願及び欧州特許に関するファイルを作成し,維持し及び保管する。
(2) 欧州特許庁長官は,作成,維持及び保管すべき欧州特許出願及び欧州特許に関するファイルの様式を定める。
(3) 電子ファイルに取り込んだ書類は,原本とみなされる。
(4) 欧州特許出願及び欧州特許に関するファイルは,次に掲げる年の終わりから少なくとも5年保管する。
(a)
出願が拒絶され,取り下げられ又は取り下げられたものとみなされる年
(b)
特許が異議申立手続により取り消される年,又は
(c)
特許期間若しくは延長期間又は第63条(2)の規定に基づく保護期間が指定国の最後の国で消滅する年
(5) (4)の規定に反しない限り,欧州特許庁は,第76条に基づく分割出願を生じさせ又は第61条(1)(b)の規定に基づく新たな出願を生じさせた欧州特許出願に関するファイルは,これら分割出願又は新たな出願の何れかに関する書類についての期間と少なくとも同じ期間保管される。これら出願に基づく欧州特許に関するファイルについても同様とする。
 
第96規則 欧州特許庁による追加公表
(1) 欧州特許庁長官は,第128条(5)の情報を第三者に通知し又は公表することについて,かつ,それを如何なる形式で行うかについて規定することができる。
(2) 欧州特許庁長官は,第49規則(3)にいう期間の経過後に受領した新たな若しくは補正されたクレームの公表,かかる公表の形式及び欧州特許公報におけるそのようなクレームに関する細目の記載について規定することができる。
 
第IX章 法的及び管理上の協力
第97規則 欧州特許庁と締約国の当局との間の通知
(1) 条約の適用から発生する欧州特許庁と締約国の中央産業財産官庁との間の通知は,両当局の間で直接に行う。欧州特許庁と締約国の裁判所又は他の当局との間の通知は,上記の中央産業財産官庁を通じて行うことができる。
(2) (1)の通知に関する費用は,通知をする当局が負担するものとし,手数料を請求することはできない。
 
第98規則 締約国の裁判所若しくは当局による,又はそれらを介するファイルの閲覧
(1) 締約国の裁判所又は当局による欧州特許出願又は欧州特許のファイルの閲覧は,原本又はその写しについて行うことができる。この場合は,第94規則の規定は,適用しない。
(2) 締約国の裁判所又は検察庁は,その手続の過程において,欧州特許庁から送達されたファイル又はその写しを第三者に通知することができる。その通知は,第128条に定める条件に従って行なう。その通知は,手数料の支払を必要としない。
(3) 欧州特許庁は,ファイル又はその写しを締約国の裁判所又は検察庁に送達する際に,第128条(1)及び(4)の規定に基づき欧州特許出願又は欧州特許に関するファイルの第三者への通知に対して適用することがあり得る制限を示す。
 
第99規則 調査依頼状についての手続
(1) 各締約国は,欧州特許庁が発出する調査依頼状を受領し,かつ,その調査依頼を実施する権限のある当局にそれを送達することを引き受ける1の中央当局を指定する。
(2) 欧州特許庁は,調査依頼状を管轄当局の言語で作成するか又はその調査依頼状に当該当局の言語による翻訳文を添付する。
(3) (5)及び(6)の規定を条件として,管轄当局は,その請求の実施に伴なう手続に関して自国の法律を適用する。特に,管轄当局は,自国の法律に従い適当な強制措置を適用する。
(4) 調査依頼状を送達された当局がそれを実行する権限を有していない場合は,調査依頼状を(1)の中央当局に直ちに送付する。当該中央当局は,調査依頼状を自国の管轄当局に送達するか,又は,当該国に管轄当局を有していない場合は,欧州特許庁に送達する。
(5) 欧州特許庁は,調査又は他の法的措置がとられるべき日時及び場所の通知を受け,それを関係当事者,証人及び鑑定人に通知する。
(6) 欧州特許庁から請求があった場合は,管轄当局は,関係する部課の職員を出席させ,その職員が証拠を提供する者に対して直接に又は管轄当局を通じて質問することを許容する。
(7) 調査依頼状の実施は,如何なる性質のものであっても,手数料又は費用の徴収をすることができない。しかしながら,調査依頼状が実施された国は,機構に対して,鑑定人及び通訳に対して支払われた手数料及び(6)の手続によって生じた費用の払戻を要求する権利を有する。
(8) 管轄当局が適用した法律が当事者に証拠を保全することを義務付けており,当該当局が調査依頼状を自ら実施することができない場合は,当該当局は,欧州特許庁の同意を得て適当な者に委託することができる。欧州特許庁の同意を求める場合は,管轄当局は,その手続の概算費用を表示する。欧州特許庁が同意する場合は,機構は,支出した費用のすべてを払い戻す義務を負う。その同意がない場合は,機構は,そのような費用について責任を負わない。
 
第X章 代理
第100規則 共通の代表者の選任
(1) 2人以上の出願人がある場合において,欧州特許の付与を求める願書に共通の代表者を記載していない場合には,願書に最初に記載されている出願人を共通の代表者とみなす。ただし,出願人の1人が職業代理人を選任することを義務付けられている場合は,この職業代理人が共通の代理人とされるが,最初に記載されている出願人が職業代理人を選任しなかった場合は,この限りでない。異議申立又は参加の通知を共同してする第三者及び欧州特許の共同権利者についても,同様にこれを準用する。
(2) 手続中に,2人以上の者に移転があった場合において,それらの者が共通の代理人を選任しなかった場合は,(1)の規定を適用する。(1)の規定を適用することができない場合は,欧州特許庁は,それらの者に対して,2月以内に共通の代理人を選任するよう要求する。この要求が満たされない場合は,欧州特許庁は,共通の代理人を選任する。
 
第101規則 委任状
(1) 欧州特許庁に対して手続をする代理人は,請求により欧州特許庁が指定する期間内に署名した委任状を提出する。欧州特許庁長官は,委任状を提出すべき場合を定める。委任状は,1又は2以上の欧州特許出願又は欧州特許を包含することができ,かつ,相当する部数を提出する。第133条(2)の要件が満たされなかった場合は,代理人の選任の通知及び委任状の提出について同じ期間が指定される。
(2) 委任した当事者のすべての特許業務に関して代理人が手続を行うことができる包括委任状を提出することができる。この場合は,1部で足りる。
(3) 欧州特許庁長官は,次の事項についての様式及び内容を定めて,それを欧州特許庁公報に公表することができる。
(a)
 第133条(2)に規定する代理についてのみの委任状
(b)
包括委任状
(4) 委任状が提出期間中に提出されなかった場合は,条約に規定されている他の如何なる法的効果に害されることなく代理人がした欧州特許出願の提出以外のすべての手続行為は,されなかったものとみなす。
(5) (1)及び(2)の規定は,委任を取り下げる書類に準用する。
(6) 委任が消滅した代理人は,その代理人による委任の消滅が欧州特許庁に通知されるまでは引き続き代理人とみなす。
(7) 別段の規定がある場合を除き,委任は,委任した者が死亡しても,欧州特許庁に対する関係においては消滅しない。
(8) 当事者によって数人の代理人が選任されている場合は,これらの代理人は,選任の通知又は委任状に別段の定がある場合においても,共同して又は単独で手続をすることができる。
(9) 代理人の組合への委任は,その組合内において業務をしていることを証明することができる代理人の委任とみなす。
 
第102規則 職業代理人名簿の修正
(1) 職業代理人の名簿の登録は,代理人の請求により,又は,度重なる催促にも拘らず,代理人が年会費を納付すべき年の終りまでに欧州特許庁の職業代理人協会に年会費を納付しなかった場合は,代理人名簿から抹消する。
(2) 第163条(1)に定める経過期間の満了後において,第134条(8)(c)の規定に基づいてとられた如何なる懲戒処分も損なうことなく,次の場合のみ,職業代理人の登録は,自動的に抹消することができる。
(a)
職業代理人が死亡し又は法的無能力になった場合
(b)
職業代理人が経過期間中に名簿に登録されたか又は第134条(6)の規定に従って欧州特許庁長官により例外として認められている場合を除き,職業代理人が締約国の1の国民でなくなった場合
(c)
職業代理人が締約国の1の領土内に事務所又は職業を有さなくなった場合
(3) 登録を抹消された者は,抹消についての条件が存在しなくなった場合は,請求によって,職業代理人名簿に再登録する。
 
第VIII部 条約第VIII部の施行規則
 
第103規則 変更の場合の公衆に対する情報
(1) 第136条の規定に従って変更の請求に添付された書類は,国内手続に関する書類と同じ条件の下にかつ同じ限度において,中央産業財産官庁が公衆に通知する。
(2) 欧州特許出願の変更に基づく国内特許が印刷された特許明細書は,当該欧州特許出願について言及しなければならない。
第IX部 条約第]部の施行規則
 
第104規則 受理官庁としての欧州特許庁
(1) 欧州特許庁が特許協力条約の下に受理官庁として行動する場合は,国際出願は,英語,フランス語又はドイツ語で提出する。国際出願は,3部提出する。支払われた手数料の領収証又は手数料の支払のための小切手を除き,特許協力条約に基づく規則3.3(a)(ii)に規定する照合欄において言及されている如何なる書類についても同様とする。ただし,欧州特許庁長官は,国際出願及びそれに関係するものについては提出部数を3部以下とすることを決定することができる。
(2) (1)第2文の規定が遵守されていない場合は,不足書類は,出願人の費用で欧州特許庁が作成する。
(3) 国際出願が受理官庁としての欧州特許庁への送達のために締約国の当局に提出される場合は,締約国は,出願日の後又は,優先権が主張されているときは,優先日の後第13月目の月が終る2週間前までに,出願が欧州特許庁に到達するようにしなければならない。
 
第105規則 国際調査機関又は国際予備審査機関としての欧州特許庁
(1) 特許協力条約第17条(3)(a)の場合は,調査手数料の金額に相当する追加手数料は,国際調査を行うべきそれぞれ別の発明について支払う。
(2) 特許協力条約第34条(3)(a)の場合は,予備審査手数料の金額に相当する追加手数料は,国際予備審査を行うべきそれぞれ別の発明について支払う。
(3) 特許協力条約に基づく規則40.2(e)及び68.3(e)の権利を損なうことなく,異議申立により追加手数料が支払われた場合は,欧州特許庁は,追加手数料の支払の求めが正当であったか否かを検討するものとし,正当でないと認定した場合は,追加手数料を払い戻す。検討した後に欧州特許庁が追加手数料の求めが,正当であると判断した場合は,欧州特許庁は,その旨を出願人に通知し,出願人に対し異議の審理のための手数料(「異議申立手数料」)の支払を求める。異議申立手数料が期間内に支払われた場合は,決定をするために異議は,審判部に付託する。
 
第106規則 国内手数料
  第158条(2)に規定する国内手数料は,次の手数料からなる。
(a)
 第78条(2)に規定する出願手数料と同額の国内基本手数料
(b)
 第79条(2)に規定する指定手数料
 
第107規則 指定官庁又は選択官庁としての欧州特許庁―欧州段階に移行するための要件
(1) 第150条(3)にいう国際出願については,出願日,又は優先権が主張されているときには優先日から起算して31月以内に,出願人は次の行為を行う。
(a)
該当する場合は,第158条(2)の規定に基づき要求される国際出願の翻訳文の提出
(b)
欧州特許付与手続のもととなる最初の出願時の又は補正がなされている出願書類の特定
(c)
 第106規則(a)に規定する国内基本料金の支払
(d)
 第79条(2)に規定する期間が既に満了している場合は,指定手数料の支払
(e)
 欧州補充調査報告を作成するべき場合は,第157条(2)(b)に規定する調査手数料の支払
(f)
 第94条(2)に定める期限が到来している場合は,第94条による審査請求の提出
(g)
 第37規則(1)による更新手数料の納付期限が到来している場合は,第86条(1)による3年次の更新手数料の支払
(h)
該当する場合は,第55条(2)及び第23規則による博覧会の証明書の提出
(2) 欧州特許庁が国際予備審査を作成した場合は,審査手数料は,料金に関する規則に定めるところにより減額する。特許協力条約の第34条(3)(c)に従って国際出願のある部分について報告書が作成されている場合は,報告書に含まれる対象に基づき審査が行われる場合に限り,手数料を減額することができる。
 
第108規則 要件の未充足の結果
(1) 国際出願の翻訳文又は審査請求書の何れかが期間内に提出されず,若しくは国内基本手数料又は調査手数料が期間内に支払われず,若しくは指定手数料が期間内に支払われない場合は,欧州特許出願は,取り下げられたものとみなす。
(2) 指定手数料が期間内に支払われなかった締約国についての指定は,取り下げられたものとみなす。
(3) 欧州特許庁は,当該出願又は締約国についての指定が(1)又は(2)の規定に基づき取り下げられたものとみなされることを認めた場合は,出願人にこのことを連絡する。第69規則(2)の規定を準用する。第1文に基づく連絡の通知の2月以内に,なされなかった手続が追完され,かつ,割増手数料が支払われた場合は,権利の喪失は生じなかったものとみなされる。
 
第109規則 出願の補正
  第86規則(2)から(4)までの規定を損なうことなしに,出願人へのその旨の通知の送付から1月の延長不能の期間内に,出願を1度補正することができる。補正された出願は,第157条(2)の規定により行われる補充調査の基礎として用いられる。
 
第110規則 クレームに課せられる手数料,未払の結果
(1) 欧州特許付与手続の基礎となる出願書類が10を超えるクレームを含む場合は,第107規則(1)に規定する期間内に第11番目及びそれに続く各クレームについてクレーム手数料を支払う。
(2) 期間内に支払われなかったクレーム手数料は,未払である旨の通知の送付から1月の延長不能の猶予期間内になお有効に支払うことができる。この期間内に補正したクレームを提出する場合は,支払うべきクレーム手数料は,その補正したクレームに基づき計算する。
(3) (1)に規定する期間内に支払われ,かつ,(2)の第2文の規定よりも超過しているクレーム手数料は,払い戻す。 (4) クレーム手数料が所定の期間内に支払われない場合は,当該クレームは,放棄されたものとみなす。
 
第111規則 欧州特許庁による形式的要件の審査
(1) 第17規則(1)に規定する発明者に関する情報が第107規則(1)に規定する期間の満了までに提出されなかった場合は,欧州特許庁は,欧州特許庁が指定する期間内にその情報を提出するよう出願人に求める。
(2) 先の出願の優先権が主張されている場合において,第88条(1)及び第38規則(1)から(3)までに規定する出願番号又は写しが第107規則(1)の規定による期間の満了するまでに提出されなかったときは,欧州特許庁は,欧州特許庁が指定する期間内に先の出願の出願番号又は写しを提出するよう出願人に求める。第38規則(4)の規定を適用する。
(3) 第107規則(1)に規定する期間の満了する時までに,特許協力条約に基づく規則5.2に規定する配列一覧を欧州特許庁が入手することができない場合,その配列一覧が定められた基準に一致していない場合,又は定められた記録媒体により提出されていない場合には,出願人は,欧州特許庁が指定した期間内に,定められた基準に一致した又は定められた記録媒体による配列一覧を提出するよう求められる。
 
第112規則 欧州特許庁による単一性の考慮
  国際調査機関が,その国際出願が発明の単一性の要件を満たしていないと認め,かつ,出願人が所定の期間内に特許協力条約の第17条(3)の規定に従いすべての追加手数料を支払わなかったために,国際出願の一部のみが当該機関によって調査された場合は,欧州特許庁は,出願が発明の単一性の要件を満たしているか否かを検討する。欧州特許庁は,要件を満たしていないと認める場合は,出願人に対して欧州特許庁が定める2週間以上6週間を超えない期間内に該当する各発明について調査手数料を支払えば,国際出願の調査されなかった部分について欧州調査報告が得られることを通知する。調査部は,調査手数料が支払われた発明に関する国際出願の部分について欧州調査報告を作成する。第46規則(2)の規定を準用する。