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植物の新品種の保護に関する国際条約

(平成十年十二月一日 条約 第十六号
  :平成十年十二月二十四日 発効)

 千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約

第一章 定義(一条)

第一条(定義)

第二章 締約国の一般的義務(二条−四条)

第二条(締約国の基本的義務)
第三条(保護の対象とすべき種類)
第四条(内国民待遇)

第三章 育成者権の付与のための条件(五条−九条)

第五条(保護の条件)
第六条(新規性)
第七条(区別性)
第八条(均一性)
第九条(安定性)

第四章 育成者権の付与のための出願(十条−十三条)

第十条(出願)
第十一条(優先権)
第十二条(出願の審査)
第十三条(仮保護)

第五章 育成者の権利(十四条−十九条)

第十四条(育成者権の範囲)
第十五条(育成者権の例外)
第十六条(育成者権の消尽)
第十七条(育成者権の行使に関する制限)
第十八条(商業を規律する措置)
第十九条(育成者権の期間)

第六章 品種の名称(二十条)

第二十条(品種の名称)

第七章 育成者権の無効及び取消し(二十一条・二十二条)

第二十一条(育成者権の無効)
第二十二条(育成者権の取消し)

第八章 同盟(二十三条−二十九条)

第二十三条(同盟国)
第二十四条(法的地位及び所在地)
第二十五条(機関)
第二十六条(理事会)
第二十七条(事務局)
第二十八条(言語)
第二十九条(財政)

第九章 この条約の適用及び他の取極(三十条−三十二条)

第三十条(この条約の適用)
第三十一条(締約国と従前の条約に拘束されている国との間の関係)
第三十二条(特別の取極)

第十章 最終規定(三十三条−四十二条)

第三十三条(署名)
第三十四条(批准、受諾、承認又は加入)
第三十五条(留保)
第三十六条(法令及び保護の対象とされる植物の種類の通報並びに公表される情報)
第三十七条(効力発生及び従前の条約への加入の禁止)
第三十八条(この条約の改正)
第三十九条(廃棄)
第四十条(既存の権利の保全)
第四十一条(この条約の原本及び公定訳文)
第四十二条(寄託者の任務)

SBT-1.htm
 
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第一章 定義

第一条(定義)
 この条約の適用上、
(@) 「この条約」とは、植物の新品種の保護に関する国際条約のうち千九百九十一年の条約をいう。
(A) 「千九百六十一年・千九百七十二年の条約」とは、千九百七十二年十一月十日の追加議定書によって改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約をいう。
(B) 「千九百七十八年の条約」とは、植物の新品種の保護に関する国際条約のうち千九百七十八年十月二十三日の条約をいう。
(C) 「育成者」とは、次の者をいう。
 品種を育成し又は品種を発見しかつ完成させた者
 締約国の法令に定めがある場合には、当該者の使用者又は当該者にその作業を委託した者
 これらの者の承継人
(D) 「育成者権」とは、この条約に定める育成者の権利をいう。
(E) 「品種」とは、既に知られている最下位の植物学上の一の分類群に属する植物の集合であって、遺伝子型又はその組合せによって生ずる特性によって特定することができ、これらの特性のうち一以上の特性により他のすべての植物の集合と、区別することができ、かつ、変化なく増殖させることが可能であるという点で一の単位とみなすことができるもの(育成者権の付与のための条件をすべて満たしているかどうかを問わない。)をいう。
(F) 「締約国」とは、この条約を締結している国又は政府間機関をいう。
(G) 締約国の「領域」とは、締約国が国である場合にはその国の領域、政府間機関である場合にはその政府間機関を設立する条約が適用される領域をいう。
(H) 「当局」とは、 第三十条(1)(A)の当局をいう。
(I) 「同盟」とは、千九百六十一年の条約によって設立され、千九百七十二年の議定書、千九百七十八年の条約及びこの条約において更に規定する植物の新品種の保護のための同盟をいう。
(I@) 「同盟国」とは、千九百六十一年・千九百七十二年の条約若しくは千九百七十八年の条約を締結している国又は締約国をいう。
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第二章 締約国の一般的義務

第二条(締約国の基本的義務)
 締約国は、育成者権を与え、これを保護する。
 
第三条(保護の対象とすべき種類)
(1)【既に同盟国となっている国】
 千九百六十一年・千九百七十二年の条約又は千九百七十八年の条約によって拘束されている締約国は、次のものにこの条約を適用する。
(@) この条約によって拘束されることとなる日以降、その日に千九百六十一年・千九百七十二年の条約又は千九百七十八年の条約を適用しているすべての植物の種類
(A) 遅くとも(@)の日から五年の期間の満了時までに、すべての植物の種類
(2)【新たな同盟国】
 千九百六十一年・千九百七十二年の条約又は千九百七十八年の条約のいずれによっても拘束されていない締約国は、次のものにこの条約を適用する。
(@) この条約によって拘束されることとなる日以降、少なくとも十五の植物の種類
(A) 遅くとも(@)の日から十年の期間の満了時までに、すべての植物の種類
 
第四条(内国民待遇)
(1)【待遇】
 締約国の国民並びに締約国の領域に住所又は居所を有する自然人及び営業所を有する法人は、育成者権の付与及び保護に関し、この条約に定める権利を害されることなく、他の締約国の領域において、当該他の締約国の国民に対し課される条件及び手続に従うことを条件として、当該他の締約国の法令によりその国民に対し現在与えられており又は将来与えられることのある待遇と同一の待遇を享受する。
(2)【「国民」】
 (1)の規定の適用上、「国民」とは、締約国が国である場合にはその国の国民、政府間機関である場合にはその政府間機関の構成国の国民をいう。
 
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第三章 育成者権の付与のための条件

第五条(保護の条件)
(1)【満たされるべき要件】
 育成者権は、次の用件を満たしている品種について与えられる。
(@) 新規性
(A) 区別性
(B) 均一性
(C) 安定性
(2)【その他の条件】
 育成者権の付与に当たっては、(1)に定めるものに条件を追加してはならず、また、(1)に定めるものと異なる条件を課してはならない。もっとも、品種には、 第二十条の規定に従い一の名称を付するものとし、出願人は、出願をする当局の属する締約国の法令に定める手続に従うとともに、必要な料金を支払う。
 
第六条(新規性)
(1)【要件】
 品種は、育成者権の出願日においてその種苗又は収穫物が次に掲げる日前に育成者により又はその同意を得て当該品種の利用を目的とした他の者への販売その他の譲渡がされていない場合には、新規性があるものとする。
(@) 出願がされた締約国の領域において、出願日から一年さかのぼった日
(A) 出願がされた締約国の領域以外の領域において、出願日から四年さかのぼった日。ただし、樹木及びぶどうについては、六年さかのぼった日
(2)【最近育成された品種】
 締約国は、この条約又は従前の条約を適用していなかった植物の種類にこの条約を適用する場合には、最近育成された品種でそのような保護の拡大の日に存在していたものについては、(1)に規定する他の者への販売その他の譲渡が(1)に定める期限より前に行われた場合であっても、(1)に規定する新規性の要件を満たしているとみなすことができる。
(3)【特定の場合の「領域」】
 (1)の規定の適用上、同一の政府間機関を構成するすべての締約国は、当該政府間機関の規則に定めがある場合には、当該政府間機関の他のいずれかの構成国の領域において、行われた行為を自国の領域において行われた行為とみなすために共同して行動することができる。そのような場合には、当該締約国は、その旨を事務局長に通告する。
 
第七条(区別性)
 品種は、出願時にその存在が一般に知られているすべての他の品種と明確に、区別される場合には、区別性があるものとする。他の品種に関し、特に、いずれかの国において育成者権の付与のため又は公の品種表への記載のための出願がされ、かつ、その出願の結果育成者権の付与又は公の品種表への記載が行われる場合には、当該他の品種は、その出願日から一般に知られているものとする。
 
第八条(均一性)
 品種は、有性繁殖をすること又は栄養繁殖をすることから生ずる特殊性から予測できる変異を除くほか、特性が十分に均一である場合には、均一性があるものとする。
 
第九条(安定性)
 品種は、繰り返し増殖させた後に又は特別な増殖周期がある場合にあっては当該周期の終わりに特性が変わらない場合には、安定性があるものとする。
 
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第四章 育成者権の付与のための出願

第十条(出願)
(1)【最初の出願の場所】
 育成者は、育成者権の最初の出願をする当局の属する締約国を自由に選択することができる。
(2)【その後の出願の時期】
 育成者は、最初の出願をした締約国の当局から育成者権を与えられる前に、他の締約国の当局に出願をすることができる。
(3)【保護の独立】
 いずれの締約国も、他の国又は政府間機関においていずれかの品種の保護のために出願がされていないこと又は保護が拒絶されたこと若しくは終了したことを理由として、当該品種に対する育成者権の付与を拒絶し又はその存続期間を制限してはならない。
 
第十一条(優先権)
(1)【優先権の期間】
 いずれかの締約国において正規に品種の保護の出願(以下「最初の出願」という。)をした育成者は、他の締約国の当局に対する当該品種の育成者権の付与のための出願(以下「その後の出願」という。)に関し、十二箇月の期間、優先権を有する。この期間は、最初の出願の日から開始する。出願の日は、この期間に算人しない。
(2)【優先権の主張】
 育成者は、優先権の利益を受けるためには、その後の出願に際し最初の出願に基づく優先権を主張しなければならない。その後の出願がされた当局は、その育成者に対し、最初の出願がされた当局の認証する当該最初の出願に係る出願書類の謄本及び双方の出願の対象である品種が同一のものであることを証明する見本その他の証拠を、その後の出願がされた日から三箇月を下回らない期間内に提出するよう求めることができる。
(3)【書類及び試料】
 育成者は、その後の出願をした締約国の法令により次条に定める審査のために必要とされている情報、書類又は試料の当該締約国の当局への提出を、優先期間の満了後二年の期間内に又は最初の出願が拒絶され若しくは取り下げられた場合にはその拒絶若しくは取下げの後適当な期間内に行うことを認められる。
(4)【優先期間内に生じた事由】
 その後の出願は、(1)に定める期間内に生じた事由(例えば、最初の出願に係る品種に関する他の出願、公表、利用等)を理由として拒絶されることはない。これらの事由は、第三者のいかなる権利も生じさせない。
 
第十二条(出願の審査)
 育成者権の付与の決定には、出願が第五条から第九条までに定める条件を満たすか否かの審査を必要とする。当局は、この審査において、当該品種の栽培その他の必要な試験を実施し、そのような試験の実施を指示し又は既に実施されたそのような試験の結果を考慮することができる。当局は、育成者に対し、審査のために必要なすべての情報、書類又は試料の提出を求めることができる。
 
第十三条(仮保護)
 締約国は、育成者権の付与のための出願の時又は出願の公表の時から育成者権の付与までの期間、育成者の利益を保護するための措置をとる。当該措置は、少なくとも、当該期間内に行われた行為であって育成者が育成者権を与えられた場合には次条の規定により当該育成者の許諾を必要とするものについて、育成者権を与えられた者が当該行為を行った者から衡平な対価の支払を受けることができるものでなければならない。締約国は、育成者がその出願を通知した者についてのみ当該措置をとることを定めることもできる。
 
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第五章 育成者の権利

第十四条(育成者権の範囲)
(1)【種苗に関する行為】
(a)  次条及び 第十六条に規定する場合を除くほか、保護される品種の種苗に関する次の行為は、育成者の許諾を必要とする。
(@) 生産又は再生産
(A) 増殖のための調整
(B) 販売の申出
(C) 販売その他の商業目的による譲渡
(D) 輸出
(E) 輸入
(F) (@)から(E)までに掲げる行為を目的とする保管
(b) 育成者は、その許諾を与えるに当たり、条件及び制限を付することができる。
(2)【収穫物に関する行為】
  次条及び 第十六条に規定する場合を除くほか、保護される品種の種苗を許諾を得ないで用いることにより得られた収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)に関する(1)(a)の(@)から(F)までに掲げる行為は、育成者の許諾を必要とする。ただし、育成者が当該種苗に関して育成者権を行使する合理的な機会があった場合は、この限りでない。
(3)【特定の加工品に関する行為】
 締約国は、 次条及び 第十六条に規定する場合を除くほか、(2)に規定する保護される品種の収穫物を許諾を得ないで用いることにより当該収穫物から直接に生産された加工品に関する(1)(a)の(@)から(F)までに掲げる行為について育成者の許諾を必要とする(育成者が当該収穫物に関して育成者権を行使する合理的な機会があった場合を除く。)ことを定めることができる。
(4)【追加し得る行為】
 締約国は、 次条及び 第十六条に規定する場合を除くほか、(1)(a)の(@)から(F)までに掲げる行為以外の行為についても育成者の許諾を必要とすることを定めることができる。
(5)【保護される品種に由来する品種その他特定の品種】
(a) (1)から(4)までの規定は、次の品種にも適用する。
(@) 保護される品種に本質的に由来する品種(保護される品種自体が本質的に由来する品種でない場合に限る。)
(A) 保護される品種から第七条の規定に従って明確に区別されない品種
(B) 保護される品種を反復して使用することが生産に必要な品種
(b) (a)(@)の規定の適用上、一の品種が次の要件を満たす場合には、当該品種は、他の品種(「原品種」)に本質的に由来するものとする。
(@) 原品種(又はそれ自体が原品種に主として由来する品種)に主として由来していること。ただし、原品種の遺伝子型又はその組合せから生ずる本質的な特性を維持していることを条件とする。
(A) 原品種と明確に区別されること。
(B) 由来する品種を得る行為から生ずる差異を除くほか、原品種の遺伝子型又はその組合せから生ずる本質的な特性において原品種に合致していること。
(c) 本質的に由来する品種は、例えば、自然的若しくは人為的突然変異体若しくは体細胞変異体を選抜すること、原品種の植物体から変異個体を選抜すること、戻し交雑を行うこと又は遺伝子工学によって形質転換を行うことによって得ることができる。
 
第十五条(育成者権の例外)
(1)【義務的例外】
 育成者権は、次の行為には及ばない。
(@) 私的にかつ非商業目的で行われる行為
(A) 試験目的で行われる行為
(B) 新品種を育成する目的で行われる行為及び 前条(5)の規定が適用される場合を除くほか当該新品種に関する 前条の(1)から(4)までに規定する行為
(2)【任意的例外】
 前条の規定にかかわらず、各締約国は、合理的な範囲内で、かつ、育成者の正当な利益を保護することを条件として、農業者が、保護される品種又は 前条(5)(a)の(@)若しくは(A)に規定する品種を自己の経営地において栽培して得た収穫物を、自己の経営地において増殖の目的で使用することができるようにするために、いかなる品種についても育成者権を制限することができる。
 
第十六条(育成者権の消尽)
(1)【権利の消尽】
 育成者権は、保護される品種若しくは 第十四条(5)に規定する品種の素材であって締約国の領域において育成者により若しくはその同意を得て販売その他の商業口的による譲渡がされたもの又は当該素材から得られる素材に関する当該領域における行為には及ばない。ただし、次の行為は、この限りでない。
(@) 当該品種を新たに増殖する行為
(A) 品種を新たに増殖することのできる素材を、当該品種の属する植物の種類を保護の対象としていない国に対して輸出する行為。ただし、輸出される素材が最終的な消費を目的としたものである場合は、この眠りでない。
(2)【「素材」の意味】
 (1)の規定の適用上、品種の「素材」とは、次のものをいう。
(@) 種苗
(A) 収穫物(植物体全体及び植物体の一部を含む。)
(B) 収穫物から直接に生産された加工品
(3)【特定の場合の「領域」】
 (1)の規定の適用上、同一の政府間機関を構成するすべての締約国は、当該政府間機関の規則に定めがある場合には、当該政府間機関の他のいずれかの構成国の領域において行われた行為を自国の領域において行われた行為とみなすために共同して行動することができる。そのような場合には、当該締約国は、その旨を事務局長に通告する。
 
第十七条(育成者権の行使に関する制限)
(1)【公共の利益】
 締約国は、公共の利益のために必要である場合を除くほか、育成者権の自由な行使の制限を行ってはならない。ただし、この条約に明文の規定がある場合は、この限りでない。
(2)【衡平な対価】
 締約国は、育成者の許諾を必要とする行為を行うことを第三者に対して認めることにより(1)に規定する制限を行う場合には、育成折が衡平な対価の支払を受けることを確保するために必要な措置をとる。
 
第十八条(商業を規律する措置)
 育成者権は、品種の素材の生産、証明、商業目的による譲渡、輸入及び輸出について規律するために締約国がその領域においてとる措置から独立したものとする。これらの措置は、いかなる場合においてもこの条約の適川に影響を及ぼすものではない。
 
第十九条(育成者権の期間)
(1)【保護の期間】
 育成者権は、一定の期間について与えられる。
(2)【最短の期間】
 (1)の期間は、育成者権の付与の日から二十年未満であってはならない。樹木及びぶどうについては、当該期間は、育成者権の付与の日から二十五年未満であってはならない。
 
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第六章 品種の名称

第二十条(品種の名称)
(1)【名称の付与及びその使用】
(a) 品種には、その固有性を示すための一の名称を付する。
(b) 締約国は、(4)の規定が適用される場合を除くほか、育成者権の保護の期間及びその満了後において、当該品種につきその登録された名称を自由に使用することが当該登録された名称と同一の名称についてのいかなる権利によっても妨げられないことを確保する。
(2)【名称の性格】
 品種の名称は、品種の識別を可能にするものでなければならない。品種の名称は、品種を示すために慣習として確立している場合を除くほか、数字のみから成るものであってはならない。品種の名称は、品種の特性若しくは価値について又は品種若しくは育成者の識別について誤認又は混同を生じさせるおそれのあるものであってはならない。品種の名称は、特に、品種の属する種類と同一の種類又は品種の属する種類に極めて類似する種類に属する既存の他の品種につき締約国の領域において使用されているいかなる名称とも異なるものでなければならない。
(3)【名称の登録】
 品種の名称は、育成者が当局に提示する。当局は、品種の名称が(2)の要件を満たしていないと認める場合には、当該名称の登録を拒否し、所定の期間内に他の名称を提示するよう育成者に要求する。当局は、育成者権を与えるのと同時に品種の名称を登録する。
(4)【第三者の既存の権利】
 第三者の既存の権利は、品種の名称の登録によって影響を受けることはない。(7)の規定により品種の名称の使用を義務付けられている者による当該名称の使用が既存の権利に基づき禁止される場合には、当局は、他の名称を提示するよう育成者に要求する。
(5)【すべての締約国における同一の名称】
 一の品種については、すべての締約国において同一の名称を提示しなければならない。各締約国の当局は、品種の名称が当該締約国の領域においては適当なものでないと認める場合を除くほか、提示された名称を登録する。品種の名称が適当なものでないと認める場合には、当局は、他の名称を提示するよう育成者に要求する。
(6)【締約国の当局間の情報交換】
 締約国の当局は、品種の名称に関する情報、特に、名称の提示、登録及び取消しを他のすべての締約国の当局に通報する。通報を受けた当局は、必要に応じ、通報を行った当局に対し名称の登録について意見を述べることができる。
(7)【名称を使用する義務】
 締約国の領域において保護が認められている品種の種苗の販売の申出又は販売その他の商業目的による譲渡を当該領域において行う者は、当該品種の育成者権の保護の期間及びその満了後において、当該品種の名称を使用しなければならない。ただし、当該名称の使用が(4)に規定する既存の権利により妨げられない場合に限る。
(8)【名称と共に使用される表示】
 品種の販売の申出又は販売その他の商業目的による譲渡に当たっては、登録された名称と共に商標若しくは商号又はこれらに類似する表示を使用することができる。この場合には、登録された名称を容易に識別することができるようにしておかなければならない。
 
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第七章 育成者権の無効及び取消し

第二十一条(育成者権の無効)
(1)【無効の理由】
 締約国は、次のことが判明した場合には、その与えた育成者権を無効であると宣言する。
(@)  第六条又は 第七条に定める条件が育成者権の付与の際に満たされていなかったこと。
(A) 主として育成者から提出された情報及び書類に基づいて育成者権の付与がされた場合において、 第八条又は 第九条に定める条件が当該権利の付与の際に満たされていなかったこと。
(B) 育成者権がこれを有すべきでない者に与えられていること。ただし、当該育成者権がこれを有すべき者に移転される場合は、この限りでない。
(2)【他の理由の排除】
 育成者権は、(1)の理由以外の理由により無効であると宣言されることはない。
 
第二十二条(育成者権の取消し)
(1)【取消しの理由】
(a) 締約国は、 第八条及び 第九条に定める条件が満たされなくなったことが判明した場合には、その与えた育成者権を取り消すことができる。
(b) 締約国は、更に、育成者が求められた期間内に次のいずれかのことを行わなかった場合には、その与えた育成者権を取り消すことができる。
(@) 品種の維持を確認するために必要な情報、書類又は試料を当局に提出すること。
(A) 権利の存続のために必要な料金を納付すること。
(B) 権利の付与の後に品種の名称が取り消される場合に、他の適当な名称を提示すること。
(2)【他の理由の排除】
 育成者権は、(1)の理由以外の理由により取り消されることはない。
 
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第八章 同盟

第二十三条(同盟国)
 締約国は、同盟国となる。
 
第二十四条(法的地位及び所在地)
(1)【法人格】
 同盟は、法人格を有する。
(2)【法的能力】
 同盟は、各締約国の領域において、当該領域に適用される法令に従い、同盟の目的の達成及び同盟の任務の遂行に必要な法的能力を享有する。
(3)【所在地】
 同盟の所在地は、ジュネーヴとし、その常設機関は、ジュネーヴに置く。
(4)【本部協定】
 同盟は、スイス連邦との間に本部協定を有する。
 
第二十五条(機関)
 同盟の常設機関は、理事会及び事務局とする。
 
第二十六条(理事会)
(1)【構成】
 理事会は、同盟国の代表により構成する。各同盟国は、理事会における代表及び代表代理各一人を任命する。代表及び代表代理は、顧問又は随員を伴うことができる。
(2)【議長及び副議長】
 理事会は、理事会を構成する同盟国の代表のうちから議長及び第一副議長を選出する。理事会は、他の副議長を選出することができる。第一副議長は、議長が職務を行うことができない場合には、議長の職務を代行する。議長の任期は、三年とする。
(3)【会期】
 理事会は、議長が招集する。理事会は、毎年、通常全期として会合する。通常会期のほかに、議長は、自己の裁量により理事会を招集することができるものとし、また、同盟国の三分の一以上の要請があるときは、三箇月以内に理事会を招集する。
(4)【オブザーバー】
 同盟国でない国に対しては、オブザーバーとして理事会の会合に出席するよう招請を行うことができる。その他の者に対しても、オブザーバー又は専門家として理事会の会合に出席するよう招請を行うことができる。
(5)【理事会の任務】
 理事会は、次の任務を有する。
(@) 同盟の利益を擁護しかつ同盟の発展を図るための適当な措置を検討すること。
(A) 理事会の手続規則を定めること。
(B) 事務局長及び必要と認めるときは事務局次長を任命し並びにそれぞれの雇用条件を定めること。
(C) 同盟の活動に関する年次報告書を検討し及び同盟の将来の事業計画を作成すること。
(D) 事務局長に対し、同盟の任務の遂行に必要な指示を与えること。
(E) 同盟の管理規則及び財政規則を定めること。
(F) 同盟の予算を審査し及び承認し並びに同盟国の分担金を決定すること。
(G) 事務局長の提出する会計報告書を審査し及び承認すること。
(H)  第三十八条に規定する会議の時期及び場所を決定し、当該会議の準備に必要な措置をとること。
(I) その他同盟の任務の効果的な遂行に必要な決定を行うこと。
(6)【投票】
(a) 国である同盟国は、理事会において一の票を有する。
(b) 政府間機関である締約国は、その権限内の事項について、同盟国であるその構成国の投票権を行使することができる。当該政府間機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。
(7)【多数】
 理事会の決定は、投じられた票の単純過半数による議決で行う。ただし、(5)の(A)、(E)及び(F)、 第二十八条(3)、 第二十九条(5)(b)並びに 第三十八条(1)の規定による決定は、投じられた票の四分の三以上の多数による議決で行う。棄権は、投票とみなさない。
 
第二十七条(事務局)
(1)【事務局の任務及び指揮】
 事務局は、理事会の委任する任務を遂行する。事務局は、事務局長が指揮する。
(2)【事務局長の責務】
 事務局長は、理事会に対して責任を有する。事務局長は、理事会の決定の実施を確保し、理事会の承認を得るために同盟の予算を提出し及びその執行を確保し、また、自己の職務の遂行並びに同盟の活動及び財政状況に関する報告書を理事会に提出する。
(3)【職員】
  前条(5)(B)の規定による場合を除くほか、事務局の任務の効果的な遂行に必要な職員の任命及び雇用の条件は、管理規則及び財政規則により定める。
 
第二十八条(言語)
(1)【事務局の言語】
 事務局は、任務の遂行に当たりフランス語、ドイツ語、英語及びスペイン語を使用する。
(2)【特定の会合における言語】
 理事会の会合及びこの条約の改正のための会議においては、(1)に定める言語が使用される。
(3)【その他の言語】
 理事会は、(1)に定める書語以外の言語の使用について決定することができる。
 
第二十九条(財政)
(1)【収入】
 同盟の経費は、次のものをもって支弁する。
(@) 国である同盟国の年次分担金
(A) 事業によって得る報酬
(B) 雑収入
(2)【分担金及び単位】
(a) 国である各同盟国の年次分担金の額は、当該各同盟国の分担金をもって支弁すべき経費の総額及び(3)の規定による当該各同盟国の単位数によって決定するものとし、(4)に定めるところにより算定する。
(b) 分担金の単位数は、整数又は分数で示される。もっとも、単位数は、五分の一を下回る分数であってはならない。
(3)【各同盟国の分担金の単位数】
(a) この条約に拘束されることとなる日に千九百六十一年・千九百七十二年の条約又は千九百七十八年の条約を締結している同盟国の分担金の単位数は、同日直前に適用されていた単位数と同一のものとする。
(b) 国である同盟国((a)に規定する同盟国を除く。)は、同盟に加盟する際に、事務局長にあてた宣言において自国の単位数を提示する。
(c) 国である同盟国は、いつでも、事務局長にあてた宣言において、(a)又は(b)の規定による単位数と異なる自国の単位数を提示することができる。この宣言は、一年の最初の六箇月の間に行われた場合には当該年の翌年の始めに効力を生じ、その他の場合には宣言が行われた年の後二年目の年の始めに効力を生ずる。
(4)【分担金の額の算定】
 各会計期間における分担金の一単位当たりの額は、当該各会計期間において国である同盟国の分担金をもって支弁すべき経費の総額を当該同盟国の分担金の総単位数で除して得た額とする。国である各同盟国の分担金の額は、一単位当たりの額に当該各同盟国の単位数を乗じて得た額とする。
(5)【分担金の支払の延滞】
(a) 分担金の支払が延滞している国である同盟国は、(b)の規定が適用される場合を除くほか、その未払の額が当該年に先立つ年について支払の義務の生じた当該同盟国の分担金の総額以上の額となった場合には、理事会において投票権を行使することができない。投票権が停止された場合にも、当該同盟国は、この条約に基づく義務を免除され又はこの条約に基づくその他の権利を奪われることはない。
(b) 理事会は、(a)の規定に該当する国である同盟国に対し、その支払の延滞が例外的なかつ避けることのできない事情によるものであると認める場合には、引き続き投票権を行使することを認めることができる。
(6)【会計検査】
 同盟の会計検査は、管理規則及び財政規則に定めるところにより、いずれか一の国である同盟国が行う。当該同盟国は、理事会が当該同盟国の同意を得て指定する。
(7)【政府間機関の分担金】
 政府間機関である締約国は、分担金を支払う義務を負わない。もっとも、当該政府間機関が自己の選択により分担金を支払う場合には、(1)から(4)までの規定を準用する。
 
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第九章 この条約の適用及び他の取極

第三十条(この条約の適用)
(1)【この条約の適用のための措置】
 各締約国は、この条約を適用するために必要な措置をとるものとし、特に次のことを行う。
(@) 育成者権の効果的な保護のための適当な法的手段について定めること。
(A) 育成者権を与える業務を行う当局を維持し又は他の締約国の当局に当該業務を委託すること。
(B) 次の事項に関する情報の定期的な公表を確保すること。
 育成者権の出願及び付与
 提示された名称及び登録された名称
(2)【法令の適合性】
 いずれの国又は政府間機関も、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の時に、自己の法令によりこの条約を実施することができる状態になければならないと了解される。
 
第三十一条(締約国と従前の条約に拘束されている国との間の関係)
(1)【この条約に拘束される国の間の関係】
 この条約及び従前の条約の双方に拘束される同盟国の間においては、この条約のみが適用される。
(2)【この条約に拘束されない国との関係】
 この条約に拘束されない同盟国(この(2)において「前者」という。)は、事務局長にあてた通告により、この条約のみに拘束される同盟国(この(2)において「後者」という。)との関係において、前者が拘束されている最新の条約を適用する旨を宣言することができる。その通告の日の一箇月後から前者がこの条約に拘束されるまでの間、前者は、後者との関係において、当該最新の条約を適用するものとし、後者は、前者との関係において、この条約を適用する。
 
第三十二条(特別の取極)
 同盟国は、品種の保護に関する特別の取極を相互間で締結する権利を留保する。ただし、当該特別の取極は、この条約に抵触するものであってはならない。
 
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第十章 最終規定

第三十三条(署名)
 この条約は、千九百九十二年三月三十一日まで、この条約の採択の日に同盟国である国による署名のために開放しておく。
 
第三十四条(批准、受諾、承認又は加入)
(1)【国及び特定の政府間機関】
(a) いずれの国も、この条に定めるところにより、この条約の締約国となることができる。
(b) いずれの政府間機関も、この条に定めるところにより、次の条件を満たしている場合には、この条約の締約国となることができる。
(@) この条約が規律する事項に関して権限を有すること。
(A) 育成者権の付与及び保護について定める法令であって当該政府間機関のすべての構成国に対し拘束力のあるものを有すること。
(B) その内部手続に従ってこの条約への加入が正当に委任されていること。
(2)【批准書、受諾書、承認書及び加入書】
 この条約に署名している国は、この条約の批准書、受諾書又は承認書を寄託することにより、この条約の締約国となる。政府間機関及びこの条約に署名していない国は、この条約への加入書を寄託することにより、この条約の締約国となる。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、事務局長に寄託する。
(3)【理事会の判断】
 政府間機関及び同盟国でない間は、加入書の寄託に先立ち、自己の法令とこの条約との適合性について理事会の判断を求める。肯定的な決定が行われた場合には、加入書は、寄託することができる。
 
第三十五条(留保)
(1)【原則】
 (2)の規定が適用される場合を除くほか、この条約に対するいかなる留保も、認められない。
(2)【特例】
(a)  第三条(1)の規定にかかわらず、この条約の締約国となる時に千九百七十八年の条約の締約国であり、かつ、栄養繁殖する品種に関して育成者権以外の工業所有権による保護を定めている国は、これらの品種にこの条約を適用することなく当該保護を継続する権利を有する。
(b) (a)の権利を行使する国は、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する際に、事務局長にその旨を通告する。当該国は、その通告をいつでも撤回することができる。
 
第三十六条(法令及び保護の対象とされる植物の種類の通報並びに公表される情報)
(1)【最初の通報】
 この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する際に、いずれの国又は政府間機関も、次の事項について事務局長に通報する。
(@) 育成者権について定めた法令
(A) この条約に拘束されることとなる日においてこの条約を適用する植物の種類の表
(2)【変更の通報】
 締約国は、次の事項について遅滞なく事務局長に通報する。
(@) 育成者権について定めた法令の変更
(A) この条約を適用する植物の種類の追加
(3)【情報の公表】
 事務局長は、締約国からの通報に基づき次の事項に関する情報を公表する。
(@) 育成者権について定めた法令及びその変更
(A) (1)(A)の表及び(2)(A)の追加
 
第三十七条(効力発生及び従前の条約への加入の禁止)
(1)【最初の効力発生】
 この条約は、五の国が批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した後一箇月で効力を生ずる。ただし、当該文書のうち少なくとも三の文書が千九百六十一年・千九百七十二年の条約又は千九百七十八年の条約の締約国である国によって寄託されることを条件とする。
(2)【その後の効力発生】
 (1)に規定する五の国の後に批准書、受諾書、承認書若しくは加入書を寄託する国又は加入書を寄託する政府間機関は、その寄託の日の後一箇月でこの条約に拘束される。
(3)【千九百七十八年の条約への加入の禁止】
 (1)の規定に従ってこの条約が効力を生じた後は、いずれの国も千九百七十八年の条約への加入書を寄託することはできない。ただし、この条約が効力を生じた後であっても、国際連合総会の確立された慣行に従って開発途上国とされる国は千九百九十五年十二月三十一日まで、その他の国は千九百九十三年十二月三十一日まで当該文書を寄託することができる。
 
第三十八条(この条約の改正)
(1)【会議】
 この条約は、同盟国の会議により改正することができる。会議の招集は、理事会が決定する。
(2)【定足数及び多数】
 会議の審議を行うためには、国である同盟国の過半数が会議に代表を出していなければならない。この条約の改正案は、会議に出席しかつ投票する国である同盟国の四分の三以上の多数による議決で採択される。
 
第三十九条(廃棄)
(1)【通皆】
 いずれの締約国も、事務局長にあてた通告によりこの条約を廃棄することができる。事務局展は、当該通告を受領した旨を遅滞なくすべての同盟国に通報する。
(2)【従前の条約】
 この条約の廃棄の通告は、この条約を廃棄する締約国が拘束されている従前の条約の廃棄の通告をも意味する。
(3)【効力発生の日】
 廃棄は、事務局長が通告を受領した年の翌年の末日に効力を生ずる。
(4)【取得された権利】
 廃棄は、廃棄が効力を生ずる日前にこの条約又は従前の条約に基づき取得された品種に関する権利に影響を及ぼすものではない。
 
第四十条(既存の権利の保全)
 この条約は、締約国の法令、同盟国間で締結された従前の条約又はこの条約以外の協定に基づき取得されていた育成者権を制限するものではない。
 
第四十一条(この条約の原本及び公定訳文)
(1)【原本】
 この条約に関しては、フランス語、英語及びドイツ語による原本一通について署名するものとし、これらの条約文の解釈に相違がある場合には、フランス文による。この条約の原本は、事務局長に寄託する。
(2)【公定訳文】
 事務局長は、関係政府と協議の上、アラビア語、スペイン語、イタリア語、日本語、オランダ語その他理事会の指定する言語によるこの条約の公定訳文を作成する。
 
第四十二条(寄託者の任務)
(1)【認証謄本の送付】
 事務局長は、この条約を採択した外交会議に代表を出したすべての国及び政府間機関並びに要請があったときは他の国又は政府間機関に対し、この条約の認証謄本を送付する。
(2)【登録】
 事務局長は、この条約を国際連合事務局に登録する。